「70歳の男性。約20年前に2型糖尿病と診断され薬物治療を受けている。最近急に複視が出現した。正中視で右眼は外転位をとっている。対光反射は異常なく眼瞼下垂もない。」障害されている脳神経はどれか。
正答:2
正答:2
右眼が外を向いたまま戻らないので、内側へ引く筋が動いていない。この筋を担当するのは動眼神経。正答は2。
眼球がどちらを向いて止まっているかから、麻痺した外眼筋とその神経を逆算できるか。
眼球は6本の外眼筋で動く。このうち外側へ引く外直筋だけが外転神経、上斜筋だけが滑車神経、残りの4本(上直筋・下直筋・内直筋・下斜筋)が動眼神経の担当である。ある筋が動かなくなると、その反対向きに引く筋だけが働き続けるので、眼球は反対方向を向いたまま止まる。この症例では右眼が外を向いて止まっているから、内側へ引く力が失われている。内側へ引くのは内直筋で、担当は動眼神経。したがって障害されているのは動眼神経。もし外転神経が傷めば外へ引けなくなるので、眼球は内側を向いて止まり、逆になる。滑車神経が傷むと上斜筋が働かず、下方かつ内側を見るときに困るため、階段を降りにくいという訴え方になる。視神経は光の情報を運ぶ神経で、眼球を動かす働きはもたない。
「外転位だから外転神経」と読むと必ず外す。眼球が向いている方向は、生きている筋が引いている方向であって、麻痺した筋の方向ではない。麻痺している筋はその反対側にある。動いている側から逆算する、という読み方をここで身につけておくと、他の眼球運動障害の設問にも使える。
動眼神経は外眼筋のほかに、上まぶたを持ち上げる上眼瞼挙筋と、瞳を縮める瞳孔括約筋も担当する。したがって動眼神経がまるごと傷むと、眼球が外へ偏るだけでなく、まぶたが下がり、瞳が開いたまま対光反射が消える。この症例ではまぶたも瞳も正常なので、動眼神経のうち一部だけが選択的に傷んでいることになる。この形は原因を絞り込む手がかりになる。
眼球が偏った方向を示し、その方向の名前が付いた神経を誤肢に置く。解法は、(1) 偏っている方向と反対に引く筋を探す、(2) その筋を担当する神経を出す、(3) まぶたと瞳の所見を合わせて確認する。
右眼が外を向いたまま止まっているので、内側へ引く内直筋が働いていない。この筋を担当するのは動眼神経。外転神経なら内側を向いて止まるので向きが逆、滑車神経は上斜筋、視神経は眼球を動かさない。