問84
「70歳の男性。約20年前に2型糖尿病と診断され薬物治療を受けている。最近急に複視が出現した。正中視で右眼は外転位をとっている。対光反射は異常なく眼瞼下垂もない。」神経症状発現の病態生理として正しいのはどれか。
この問題の分類段階2 理解正答の理由や選択肢の違いを整理する問題
正答:2
正答:2
長期の糖尿病を背景とする動眼神経障害で、瞳孔反応が保たれている。本問では虚血性の障害が最も考えられ、正答は2。
同じ動眼神経麻痺でも、何が神経を傷めたかを所見から絞り込めるか。
糖尿病では神経を養う細い血管の障害によって、虚血性の動眼神経麻痺が起こることがある。動眼神経の表層を走る瞳孔への副交感神経線維が比較的保たれ、眼球運動が障害されても対光反射が残る型が知られている。本問は長期の糖尿病という背景とこの所見から、虚血を選ぶ。圧迫性の病変では瞳孔障害を伴うことがあるが、瞳孔が正常な動脈瘤例もある。瞳孔温存だけで圧迫を除外することはできない。
瞳孔温存は虚血性を考える手がかりであり、圧迫性病変を除外する検査ではない。急に生じた複視や動眼神経麻痺では、瞳孔の状態だけで紹介の緊急度を下げず、速やかな医療機関での評価につなげる。
虚血性と確認された動眼神経麻痺は、数か月のうちに改善することがある。ただし、その見通しを未評価の急な複視へ当てはめて待機しない。糖尿病があっても別の原因が併存し得るため、発症の経過や他の神経所見と合わせて原因を評価する。
背景疾患と神経所見を組み合わせて最も考えられる病態を選ぶ。試験で最適解を選ぶことと、実際の患者で他の原因を安全に除外することは同じではない。
本問では長期の糖尿病と瞳孔反応の温存から虚血を選ぶ。ただし、瞳孔が正常なら圧迫ではない、緊急性が低い、とは判断できない。急な複視は原因を評価する必要がある。