「14歳の男子。サッカー部に入部してから3か月が経過した。最近腰部を反らすと腰に痛みが出るようになり来院した。」予想される診察所見はどれか。
正答:2
正答:2
脊椎分離症は、脊椎骨の上下関節突起の間をつなぐ椎弓の峡部で骨性連続を欠く状態で、第5腰椎に好発する。発育期の過度の運動による疲労骨折とその遷延治癒が主因とされ、スポーツ選手では発生が一般人口の2〜3倍にのぼる。本症例の『スポーツ活動の多い10代男性で後屈により症状増悪・神経根症状なし』はこの典型像に合致する。
脊椎分離症で予想される診察所見(どの動作・テストで腰痛が誘発されるか)を問う。分離部(椎弓峡部)への力学的負荷が加わる動作で痛みが増強し、神経根を圧迫する病態ではないため神経伸展テストは陰性、という構造の理解が核心。
教科書では脊椎分離症の症状は『腰部の鈍痛や疲労感』で、坐骨神経症状は一般にはないと記載される(脊椎すべり症を起こすと坐骨神経症状を呈することがある)。分離部は椎弓の後方要素であり、体幹の回旋・後屈など分離部に剪断・伸展ストレスを与える動作で腰痛が増強すると考えられる。神経根を圧迫するヘルニア等とは病態が異なるため、坐骨神経伸展テスト(SLR)や大腿神経伸展テスト(FNS)は陽性化しない。
椎間板ヘルニア(前屈・SLR陽性・神経根症状あり)と脊椎分離症(後屈/回旋で増悪・神経伸展テスト陰性・若年スポーツ)を取り違えやすい。『神経根症状の有無』が両者を分ける鍵。
脊椎分離症の発生頻度は全人口の5〜7%、そのうち10〜20%が分離すべり症に移行する。スポーツ選手では2〜3倍。青少年で腰痛が始まったばかりのものは硬性コルセットによる厳格な安静固定で分離部の骨性癒合・完治が期待できる。慢性化例は軟性コルセットで対症的に固定する。
『腰痛=SLR陽性』と短絡させる罠。SLRやFNSは神経根(坐骨神経・大腿神経)の伸展テストであり、神経根症状を伴わない疾患では陰性になる。設問が『神経根症状なし』を提示している場合、神経伸展テストは陰性と判断する。
脊椎分離症=椎弓峡部の骨性連続の途絶(L5好発・若年スポーツ・疲労骨折)。症状は腰部の鈍痛・疲労感で、分離部に負荷のかかる後屈や回旋で腰痛が増強する。神経根を圧迫する病態ではないので坐骨神経症状はなく、SLRもFNSも陰性。これに対し椎間板ヘルニアは前屈・SLR陽性・神経根症状ありで対照的。すべり症に移行すると坐骨神経症状が出うる点も整理しておく。