次の文で示す症例の神経絞扼部に対する刺鍼部位として最も適切なのはどれか。「28歳の女性。職業は鍼灸師。回外位で左前腕にカバンを引っかけて持つことが多く、内側上顆から肘窩内側縁に沿った張り感とともに左手掌橈側にしびれを自覚する。最近、左手で艾を捻ることが困難である。」
正答:1
正答:1
内側上顆から肘窩内側縁に沿う張り感は円回内筋、手掌橈側のしびれと母指の巧緻運動障害は正中神経。前腕近位で正中神経が円回内筋に絞扼された状態で、孔最も少海も解剖に円回内筋を含む。正答は1。
張り感の部位から絞扼している筋を、しびれの分布から神経を決め、その筋の走行上にある2穴を結ぶ線を選べるか。
正中神経が絞扼されうるのは、上腕二頭筋腱膜の下、円回内筋の上腕頭と尺骨頭にはさまれた部分、そして浅指屈筋の起始腱の位置。内側上顆から肘窩の内側縁へ延びる張り感が指しているのは円回内筋の走行そのもので、この筋による絞扼を示す。艾を捻る動作は母指と示指の細かい対立運動で、母指球筋の筋力低下があると難しくなる。刺鍼部位は円回内筋の走行を挟む2穴で決める。少海は肘前内側、上腕骨内側上顆の前縁、肘窩横紋と同じ高さにあり、解剖に円回内筋が挙がる。孔最は前腕前外側、尺沢と太淵を結ぶ線上で手関節掌側横紋の上方7寸にあり、解剖はやはり腕橈骨筋と円回内筋。この2穴の間が円回内筋の領域になる。
正中神経の絞扼というと手根管が先に浮かび、3や4のような遠位の肢を選びやすい。本例は張り感の部位が内側上顆から肘窩内側縁と明記されており、絞扼の高さが前腕近位であることが問題文に書かれている。しびれの分布で神経を、張り感の部位で高さを決める。
円回内筋症候群では、前腕の回内を反復する動作で症状が誘発され、手根管症候群と違って手掌の感覚(正中神経手掌枝の領域)も障害されうる。前骨間神経症候群は運動枝のみの障害で、母指と示指でOKサインが作れなくなる(涙滴徴候)。上腕二頭筋腱膜による絞扼では、肘を曲げて前腕を回外させながら抵抗をかけると痛みが出る。誘発テストの結果は絞扼部位の局在診断の手がかりになる。
正中神経の走行上に見える穴を複数置き、高さの違いだけで誤肢を作る。解法は、(1) しびれの分布で神経を確定、(2) 張り感・圧痛の部位で絞扼の高さを確定、(3) その高さで標的筋の上にある2穴を選ぶ。経穴の解剖欄に標的筋が書かれているかが決め手。
内側上顆から肘窩内側縁に沿う張り感は円回内筋、手掌橈側のしびれと母指の巧緻運動障害は正中神経を示す。前腕近位での正中神経絞扼=円回内筋症候群。少海は上腕骨内側上顆の前縁で解剖に円回内筋、孔最も解剖に円回内筋を含むので、この2穴の間が円回内筋の走行域になる。曲池と曲沢の間は肘窩外側、間使と大陵の間は前腕遠位、手三里と支正の間は前腕背側で、いずれも合わない。