次の文で示す症例の罹患筋に対する刺鍼部位として最も適切なのはどれか。「20歳の男性。右利き投手。オーバースロー投球時のコッキング期に右肩峰の前下方に痛みが出る。インピンジメントテスト陽性。」
正答:1
正答:1
コッキング期に肩峰の前下方が痛み、インピンジメントテスト陽性。挟まれて傷むのは棘上筋腱で、棘上筋の上にある経穴は秉風。正答は1。
インピンジメント症候群で傷む腱を特定し、その筋の上にある経穴を選べるか。他の3穴はいずれも肩甲部にあるが乗っている筋が違う。
投球のコッキング期は肩関節が外転・外旋位をとる相で、ここから内旋へ移るときに上腕骨頭が肩峰・烏口肩峰靱帯・肩鎖関節の下をくぐる。この間に挟まれるのが肩峰下の滑液包と棘上筋腱、上腕二頭筋の長頭腱で、インピンジメント症候群と呼ばれる。痛みが肩峰の前下方に出るのはこの位置関係による。棘上筋は棘上窩を起始とし、その上にある経穴が秉風で、肩甲部・棘上窩・肩甲棘中点の上方にあり、解剖は僧帽筋と棘上筋。天宗は肩甲棘の中点と肩甲骨下角を結ぶ線の上1/3で、解剖は棘下筋。肩外兪は第1胸椎棘突起下縁の高さで後正中線の外方3寸、解剖は僧帽筋と肩甲挙筋。肩貞は肩関節後方で三角筋・小円筋・上腕三頭筋のあたり。
棘上窩と棘下窩、それに乗る秉風と天宗の取り違えが最大の分かれ目。肩甲棘より上が棘上窩=棘上筋=秉風、下が棘下窩=棘下筋=天宗。腱板4筋(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)のうち、肩峰下で挟まれるのは棘上筋腱が代表。
投球障害肩は投球で生じる肩の傷害をまとめた呼び方。インピンジメント症候群のほかに、肩峰下の滑液包の炎症、棘上筋腱の炎症、上腕二頭筋の長頭腱の炎症、リトルリーグ肩(上腕骨近位の骨端線離開)などが入る。インピンジメントが繰り返されると腱板断裂に進みうる。ペインフルアークサイン(外転60〜120度で疼痛)やホーキンステストも同じ病態をみる。
肩甲部の経穴を4つ並べ、棘上窩と棘下窩の穴を隣り合わせに置く。解法は、(1) 傷む構造(腱)を特定、(2) その筋の起始する窩を出す、(3) その窩の上にある経穴を選ぶ。経穴の解剖欄にその筋があるかで確認できる。
投球のコッキング期から内旋へ移る局面で上腕骨頭が肩峰の下をくぐり、棘上筋腱や肩峰下滑液包が挟まれるのがインピンジメント症候群。肩峰前下方の痛みとインピンジメントテスト陽性がこれを示す。罹患筋である棘上筋の上にあるのは、棘上窩に取る秉風。天宗は棘下筋、肩貞は肩関節後方の三角筋・小円筋など、肩外兪は僧帽筋・肩甲挙筋で、いずれも棘上筋ではない。