次の文で示す患者の病証に対する治療方針として最も適切なのはどれか。「65歳の男性。1か月前から腰下肢のだるさがあり、最近では耳鳴りが断続的に起こる。舌は紅、脈は細数を認める。」
正答:2
正答:2
腰下肢のだるさと耳鳴は腎の症候、舌紅・脈細数は陰虚の所見。合わせて腎陰虚なので、腎陰を補う。正答は2。
症状から臓を決め、舌脈から虚実・寒熱を決め、臓+陰陽の形に組み立てられるか。治療方針を問う型の基本形。
腎は骨を主り腰は腎の府とされるので、腰や下肢のだるさは腎の不足を示す。耳は腎の竅で、腎虚では耳鳴・難聴が起こる。ここまでで臓は腎に決まる。次に虚の中身を陰か陽かで分ける。舌が紅く脈が細数なのは、陰液が不足して相対的に熱が目立つ陰虚の典型所見。脈の細は陰血の不足、数は熱を示す。腎陽虚なら冷え・畏寒・舌淡・脈沈遅の側に振れるので合わない。したがって病証は腎陰虚で、治療方針は腎陰を補うこと。
腰のだるさだけでは腎陰虚とも腎陽虚とも決まらない。分けるのは舌脈で、紅舌・細数脈なら陰虚、淡舌・沈遅脈なら陽虚。耳鳴も、陰虚では高い音で夜間に強まり、実証(肝火)では突然の大きな音になるなど性質が異なる。
腎陰虚の代表症状:腰膝酸軟、めまい、耳鳴・難聴、五心煩熱、盗汗、口乾、遺精、舌紅少苔、脈細数。腎陽虚:腰膝酸軟に加えて畏寒肢冷、夜間頻尿、下痢(五更泄瀉)、性機能低下、舌淡胖・苔白、脈沈遅無力。同じ腎虚でも、熱の所見があるか冷えの所見があるかで治法が正反対になる。
臓を示す症状(腰・耳)と陰陽を示す舌脈を分けて置き、片方だけを見ると別の臓や別の陰陽へ流れる形にする。解法は、(1) 症状から臓、(2) 舌脈から陰陽・虚実、(3) 臓+陰陽で証名を作り、それを補う/瀉すで方針に変換。
腰下肢のだるさと耳鳴は腎の症候、舌紅と脈細数は陰虚の所見。合わせて腎陰虚で、方針は腎陰を補うこと。肺陰虚なら空咳や声のかすれ、脾陽虚なら食欲不振・冷え・舌淡・脈沈遅が出るはずで、本例の所見と合わない。腎虚を陰虚と陽虚に分ける決め手は舌脈にある。