次の文で示す患者の病証に対する治療方針として最も適切なのはどれか。「36歳の男性。主訴は焦燥感。仕事の重圧によりイライラする。最近は動悸があり、寝付きが悪い。顔が赤く、便秘である。舌尖は紅、脈は数有力を認める。」
正答:2
正答:2
仕事の重圧によるイライラから動悸・入眠困難・顔面紅潮・便秘。舌尖紅・脈数有力は実熱で、しかも舌尖は心の部位。心火亢盛なので心火を瀉す。正答は2。
舌の部位(舌尖)と脈の有力・無力から、臓と虚実を同時に決められるか。補うのか瀉すのかを間違えない設問。
精神的ストレスが続くと肝の疏泄が失調して肝鬱気滞となり、鬱した気が熱に変わって肝火となる。肝火が心に及ぶと心火が亢ぶる。心は神志を主り血脈を主るので、心火が亢盛になれば動悸(心悸)と寝つきの悪さ(不眠)が出る。火は上炎するので顔が赤くなり、熱が腸を乾かせば便秘になる。舌診では舌尖が心に配当されるため、舌尖が紅いことは心の熱を直接示す。脈が数で有力なのは実熱で、虚熱なら細数など無力になる。したがって心火亢盛で、実熱には瀉法を用いる。
イライラという語から肝だけを見ると「肝陰を補う」を選びやすい。舌尖という部位の指定が心を名指ししており、脈の有力が虚を否定している。舌の部位配当(舌尖=心、舌辺=肝胆、舌中=脾胃、舌根=腎)を押さえておくと迷わない。
心火亢盛の代表症状:心煩、不眠、動悸、顔面紅潮、口渇、口内炎(口舌生瘡)、尿が濃く量が少ない(尿短赤)、便秘、舌尖紅、脈数有力。心陰虚では動悸・不眠に加えて五心煩熱・盗汗・舌紅少苔・脈細数と、虚熱の側に振れる。心血虚は動悸・不眠・健忘・顔色が白い・舌淡・脈細で熱の所見がない。実熱・虚熱・血虚の3つを、熱の有無と脈の有力無力で分ける。
精神症状を並べて肝へ誘導しつつ、舌脈で心と実熱を指定する。解法は、(1) 舌の部位配当で臓を確認、(2) 脈の有力・無力で虚実を確認、(3) 実熱なら瀉、虚熱なら滋陰、と方針を反転させない。
仕事の重圧によるイライラから肝鬱気滞が化火し、心火まで亢ぶった状態。動悸・入眠困難・顔面紅潮・便秘に加え、舌尖紅が心の熱を、脈数有力が実熱を示す。実熱なので治法は瀉で、心火を瀉すのが正しい方針。肝陰を補うのは虚熱への治法、脾陽を補うのは冷えの証、肺の痰湿を除くのは咳と多痰があるときで、いずれも合わない。