「45歳の女性。主訴は倦怠感。1か月前より強くなった。寒がりで、動作が緩慢である。食欲低下、便秘、月経過多、徐脈を認める。」病証として最も適切なのはどれか。
正答:3
正答:3
同じ症例を東洋医学でみると、寒がり・動作緩慢・食欲低下という脾の運化低下と、温める力の不足が重なった脾陽虚。正答は3。
西洋医学的な病名(甲状腺機能低下症)から離れ、同じ所見を臓腑弁証に置き換えられるか。連問の後半で視点の切り替えを問う型。
脾は運化を主り、飲食物から気血を作り水湿をさばく。脾気が不足すると食欲低下・倦怠感・腹満・軟便が出る。さらに陽気まで不足すると温煦の作用が落ち、四肢末端まで陽気が届かないため寒がりや冷えが加わる。これが脾陽虚。本例は倦怠感・食欲低下という脾気虚の所見に、寒がりと動作の緩慢さという陽虚の所見が重なっている。腎陰虚なら腰膝酸軟・耳鳴・五心煩熱・舌紅少苔と熱の側に振れ、寒がりとは合わない。胃気虚は食欲低下や胃脘部の不快が主で、全身の冷えまでは説明しない。風寒犯肺は外感の急性期で悪寒発熱・咳嗽・鼻閉が出るもので、1か月かけて強くなった経過と合わない。
寒がりというだけで腎陽虚を思い浮かべやすいが、選択肢に腎陽虚は無く腎陰虚が置かれている。陰虚は熱、陽虚は寒という基本の軸を外さなければ、腎陰虚は真っ先に消える。脾陽虚と腎陽虚は実際には併存しやすく、脾腎陽虚としてまとめられることもある。
脾気虚→脾陽虚の進み方:脾気虚(食欲不振・食後の腹満・倦怠感・軟便・舌淡・脈弱)に、温煦の低下による症状(腹部や四肢の冷え、冷たいもので増悪、水様便)が加わると脾陽虚。さらに水湿がさばけずに停滞すると浮腫や痰湿を生む(脾虚生湿)。甲状腺機能低下症のように代謝が落ちて冷えと浮腫が出る病態は、東洋医学では脾陽虚・腎陽虚として捉えられることが多い。
前問で西洋医学の病名を答えさせ、後半でそのまま西洋医学の枠で考えさせないようにする。解法は、(1) 症状を寒熱・虚実に振り分ける、(2) 臓を決める(食欲・運化なら脾)、(3) 気虚か陽虚かを冷えの有無で決める。
甲状腺機能低下症の症例を東洋医学でみると、倦怠感・食欲低下という脾気虚に、寒がりと動作の緩慢さという温煦の低下が重なった脾陽虚。腎陰虚は熱の所見を伴うので寒がりと合わず、胃気虚は全身の冷えを説明せず、風寒犯肺は急性の外感で慢性の経過と合わない。