「54歳の男性。数日前から左耳に痛みがあり、しばらくしてから外耳道に水疱が出現した。同側の表情筋の麻痺と聴力の低下を伴っている。」最も考えられる疾患はどれか。
正答:4
正答:4
耳の痛みに続いて外耳道に水疱が出て、同じ側の表情筋麻痺と聴力低下が揃った。水痘帯状疱疹ウイルスが再び活性化して起こるラムゼイ・ハント症候群。正答は4。
末梢性顔面神経麻痺のうち、水疱と内耳症状を伴う型を見分けられるか。ベル麻痺との分岐点が問われている。
顔面神経麻痺のうち末梢性のものは、原因不明とされるベル麻痺が最も多いが、水痘・帯状疱疹ウイルスが膝神経節に潜伏して再活性化した場合はラムゼイ・ハント症候群になる。ウイルスによる神経炎で膝神経節が障害され、耳介や外耳道に疱疹が出て強い耳痛を伴う。顔面神経管の中で神経が腫れて虚血に陥ると末梢性顔面神経麻痺となり、隣接する内耳神経も巻き込まれて難聴・耳鳴・めまいを合併する。本例は耳痛→外耳道の水疱→同側の表情筋麻痺+聴力低下という順序と組合せがそろっている。ベル麻痺では水疱も内耳症状も伴わない。脳幹梗塞では他の脳神経症状や交叉性麻痺を伴うことがあるが、橋の顔面神経核や核から出る線維の障害では、額も含む末梢型の顔面麻痺になり得る。脳幹という病変部位だけで核上性の麻痺と決めない。聴神経腫瘍は難聴・耳鳴・平衡障害が緩徐に進むもので、急な水疱と顔面神経麻痺の組合せにはならない。
本問では耳痛・外耳道の水疱・難聴の組合せが重要。額の運動が保たれる核上性麻痺の典型像と、顔面神経核・核下線維の障害による末梢型麻痺を区別する。橋の脳卒中でも額が動かなくなることがあるため、額のしわ寄せだけで脳卒中を除外しない。疱疹が目立たないハント症候群もある。
顔面神経は側頭骨の中の顔面神経管を抜け、茎乳突孔で頭蓋の外へ出て表情筋へ広がる。管内では膝神経節を作り、大錐体神経(涙腺)、アブミ骨筋神経、鼓索神経(舌前2/3の味覚と唾液腺)を分枝する。障害部位が高いほど、味覚障害・聴覚過敏・涙分泌低下が加わる。ハント症候群はベル麻痺より予後が悪く、早期の抗ウイルス薬とステロイド投与が行われる。
顔面神経麻痺を起こしうる疾患を4つ並べ、水疱と内耳症状という2つの手がかりを1つずつ確認させる。解法は、(1) 中枢性か末梢性かを判定、(2) 皮疹の有無、(3) 内耳症状の有無、(4) 経過の速さ。
耳痛に続く外耳道の水疱、同側の表情筋麻痺、聴力低下の組合せからラムゼイハント症候群を選ぶ。脳幹梗塞でも末梢型の顔面麻痺は起こり得るが、本問の水疱を含む症状の組合せとは異なる。病変の場所と、核上性・核下性の麻痺の型を混同しない。