「54歳の男性。数日前から左耳に痛みがあり、しばらくしてから外耳道に水疱が出現した。同側の表情筋の麻痺と聴力の低下を伴っている。」罹患筋を広範囲に刺激するのに最も適切な治療穴はどれか。
正答:4
正答:4
罹患筋は表情筋で、支配するのは顔面神経。翳風は茎乳突孔のすぐ外側にあたり、ここで神経本幹を刺激すれば表情筋全体へ届く。正答は4。
「広範囲に刺激する」という条件を、個々の筋ではなく神経の本幹を狙うという発想に変換できるか。経穴の部位と骨の孔の対応が要点。
表情筋は顔面全体に広く分布し、すべて顔面神経に支配される。個別の筋の上に取る穴では一部にしか届かないが、神経が骨から顔面へ出てくる地点で刺激すれば、そこから分かれる枝の支配域全体に及ぶ。顔面神経は側頭骨の中の顔面神経管を抜け、茎乳突孔で頭蓋の外へ出る。翳風は前頸部、耳垂後方、乳様突起下端前方の陥凹部にあり、これは茎乳突孔のすぐ前にあたるので、顔面神経本幹への刺激点になる。糸竹空は眉毛外端の陥凹部で眼輪筋の外側部、巨髎は瞳孔線上で鼻翼下縁と同じ高さ、顴髎は頬骨部で、いずれも顔面の一部の筋にしか対応しない。
顔面の穴を4つ並べられると、麻痺の目立つ部位に近い穴を選びたくなる。設問の「広範囲に」という語が、個々の筋ではなく神経の出口を狙えという指示になっている。翳風は経穴名の読みも部位も紛らわしく、翳明(奇穴)は翳風の後方約1寸に取る別の穴。
茎乳突孔は側頭骨の乳様突起と茎状突起の間にある孔で、顔面神経の頭蓋外への出口。ここより末梢では耳後神経・二腹筋枝・茎突舌骨筋枝を出したあと、耳下腺内で側頭枝・頬骨枝・頬筋枝・下顎縁枝・頸枝に分かれて表情筋に分布する。顔面神経麻痺の治療では、翳風のほか陽白・攢竹・四白・地倉・頬車・下関などを、麻痺した枝の支配域に合わせて併用する。
顔面の経穴を並べ、局所の穴と本幹の穴を混ぜる。解法は、(1) 罹患筋とその支配神経を出す、(2) 「広範囲」という条件を神経本幹への刺激と読み替える、(3) 神経が骨から出る孔に一致する経穴を選ぶ。
表情筋は顔面全体に広がり、すべて顔面神経が支配する。広範囲に刺激するには個々の筋ではなく神経の本幹を狙う。顔面神経は茎乳突孔から頭蓋外へ出るので、耳垂後方・乳様突起下端前方の陥凹部にある翳風が刺激点になる。糸竹空・巨髎・顴髎はいずれも顔面の一部の筋に対応する局所の穴。