「29歳の女性。主訴は不眠。寝付きが悪い。起床時には四肢がだるい。足の冷えがあり、生ものを食べると下痢をしやすい。舌は淡白で胖大、脈は濡を認める。」病証として最も適切なのはどれか。
正答:3
正答:3
生ものを食べると下痢し、足が冷え、四肢がだるい。舌は淡白で胖大、脈は濡。脾気虚が進んで陽虚に至り、湿も停滞している脾陽虚。正答は3。
不眠という主訴に引きずられず、舌脈と消化器症状から脾の陽虚を読めるか。舌の胖大と濡脈が湿を示す。
脾は運化を主るので、冷たいものや生ものを摂ると運化が滞って下痢しやすくなる。四肢は脾が主るとされ、脾気が不足すると四肢のだるさが出る。ここに足の冷えが加わるのは温煦の作用が落ちた陽虚の段階。舌が淡白なのは気血・陽気の不足、胖大なのは水湿が停滞して舌がむくんでいること、脈が濡なのも湿を示す。合わせて脾陽虚。不眠については、脾気が不足すると血を十分に作れず心を養えなくなるため、心血虚を経て寝つきが悪くなる。肝血虚なら目のかすみ・こむら返り・爪の異常が、心気虚なら動悸・息切れ・自汗が、腎気虚なら腰膝酸軟・夜間頻尿が前面に出るはずで、本例の消化器症状と冷えは説明しにくい。
主訴が不眠なので心の証を選びやすい。決め手は舌と脈で、淡白胖大の舌と濡脈は湿を伴う陽虚を示し、心気虚では出にくい。脾が血を作れないから心が養われないという流れを押さえると、不眠と脾陽虚が矛盾しないことが分かる。
脾気虚は、脾胃の弱さ、思い悩みすぎ、働きすぎ、慢性の病などで脾気がすり減って起こり、運化の失調で食欲不振・食後の膨満感が出る。水液が停滞すれば湿・痰・飲となり浮腫を作る。脾気虚が進めば脾陽虚になり、虚寒の症状(腹部や四肢の冷え、冷たいもので増悪)が加わる。寒湿が脾を困らせると下痢し、脈は濡緩、舌は淡白で胖大となる。脾気が不足して血を作れなければ心血虚となり不眠が生じる。
主訴(不眠)に対応する臓の肢を置き、そこへ誘導する。解法は、(1) 随伴症状を臓別に分ける、(2) 舌脈で虚実・寒熱・湿の有無を確認、(3) 主訴が二次的に生じる経路を説明できる証を選ぶ。
生ものを食べると下痢する、足が冷える、四肢がだるい、舌は淡白で胖大、脈は濡。これらは脾気虚が陽虚に進み湿が停滞した脾陽虚を示す。不眠は、脾が血を十分に作れず心を養えないことから二次的に生じる。肝血虚・心気虚・腎気虚では、消化器症状と冷えと湿の所見がそろわない。