「17歳の女子バレーボール選手。スパイクの練習量が多くなり、左下腿中央部の痛みと腫脹を自覚。近医で、左脛骨中央に著明な圧痛とエックス線側面像で骨皮質の肥厚を認めた。体温は正常、安静時および夜間の痛みはない。」疾患として最も考えられるのはどれか。
正答:2
正答:2
練習量が増えたあとに骨そのものが痛み、写真では骨の外側が厚くなっている。骨に細かい傷が積み重なった状態。正答は2。
痛む場所が骨か軟部組織か、そして熱と夜間痛の有無から病態を絞れるか。
跳んで着地する動作を繰り返すと、すねの骨には同じ場所に繰り返し力がかかる。骨は傷んでは修復するが、修復が追いつかないと細かい傷が積み重なり、やがて痛みが出る。修復の過程で骨の外側の硬い層が厚くなるので、写真では骨皮質の肥厚として写る。圧痛が骨そのものに限られていること、練習量の増加という背景があること、この2つがこの病態を示す。加えて、熱がなく、安静にしているときと夜間には痛まないという情報が、他の可能性を打ち消している。骨に膿がたまる病気なら熱が出るし、骨にできる腫瘍の一種は夜間の痛みが特徴になる。骨を包む膜や筋の付着部が痛む病態では、圧痛は骨の縁に沿って広い範囲に出て、骨皮質が厚くなる所見も出にくい。
すねの痛みは、骨そのものか、骨の縁の軟部組織かで分かれる。1点に限った圧痛と写真の変化があれば骨、縁に沿って広い範囲が痛めば軟部組織。さらに、熱があれば感染、夜間に痛めば腫瘍、と加えていくと4つが分かれる。症例文の「体温は正常」「安静時および夜間の痛みはない」は、この絞り込みのために置かれている。
この病態は、跳躍や走行を繰り返す競技で起こりやすく、練習量の急な増加、硬い路面、合わない靴、下肢の並びの崩れが背景になる。初期はエックス線写真に写らないことがあり、磁気を使う画像のほうが早く分かる。進むと完全に折れることがあるので、痛みを我慢して続けさせない。「走る」動作で起こる代表的なスポーツ傷害には、ほかにアキレス腱炎、足底腱膜炎、腸脛靱帯炎、膝蓋靱帯炎、鵞足炎がある。
すねの痛みをきたす病態を4つ並べ、否定の材料を症例文に埋め込む。解法は、(1) 圧痛が1点か広い範囲かを確認、(2) 発熱の有無で感染を除く、(3) 夜間痛の有無で腫瘍を除く、(4) 画像の所見と合わせる。
練習量が増えたあとに骨の1点が痛み、骨皮質が厚くなっていれば疲労骨折。熱がないので化膿性骨髄炎ではなく、夜間に痛まないので類骨骨腫でもなく、圧痛が1点なのでシンスプリントとも違う。