「66歳の男性。右前頭葉に脳出血を発症し保存治療中。身体麻痺は認められず排泄動作は自立しているが、トイレに行くこと自体を忘れて失禁することがある。」高次脳機能障害として最も考えられるのはどれか。
正答:2
正答:2
体は動くのに、トイレへ行くという一連の段取りを自分で始められない。前頭葉が担う組み立ての働きが落ちている。正答は2。
傷んだ場所と、失われた働きの中身を結びつけられるか。
前頭葉は、目標を立て、順番を組み、始めて、途中で確かめ、終える、という一連の組み立てを担う。ここが傷むと、体を動かす力も、動作そのものの手順も残っているのに、必要なときに自分から始められなくなる。この人は麻痺がなく排泄の動作そのものは自分でできるのに、トイレへ行くこと自体を忘れて漏らしてしまう。つまり「尿意に気づいたらトイレへ向かう」という組み立てが働いていない。これが遂行機能の障害である。誤肢はいずれも別の働きの障害にあたる。左右どちらかの空間に気づけないのが半側空間無視、自分の体の一部を認識できないのが身体失認、動作の手順そのものが組めなくなるのが観念失行で、後者は道具の使い方が分からなくなるという形で現れる。
排泄の失敗を見ると、まず膀胱の問題や認知症を思い浮かべやすい。しかしここでは動作そのものはできており、始めるきっかけと段取りだけが抜けている。「何ができて、何ができないか」を分けて書き出すと、どの働きが落ちているかが決まる。前頭葉の損傷という情報も、この判断を支えている。
遂行機能の障害では、料理の手順が組めない、複数の用事を順番に片づけられない、途中で止まったまま次へ進めないといった形で現れる。生活では、手順を紙に書いて見える場所に貼る、時間を決めて声をかける、環境を一定に保つといった工夫が有効になる。前頭葉の損傷では、このほか意欲の低下、抑制のきかない言動、同じ行動の繰り返しも現れる。
高次脳機能障害の名前を4つ並べ、症状の記述から選ばせる。解法は、(1) できていることとできていないことを分ける、(2) 落ちている働きを一言で言い換える、(3) その働きを担う名前を選ぶ。
麻痺がなく排泄動作もできるのに、トイレへ行くこと自体を忘れるのは遂行機能障害。前頭葉が担う組み立ての働きが落ちている。半側空間無視は注意の方向、身体失認は体の認識、観念失行は手順そのものの障害。