「58歳の女性。6日前から右肩のこり感があった。昨日から右肩甲骨内側の痛みと右前腕橈側から母指・示指のしびれが出現した。右上肢の挙上障害はなく、衣服のボタンかけにも異常はない。下肢に症状はない。」本患者の筋力評価で最も適切なのはどれか。
正答:3
正答:3
問87と同じ症例(右C6神経根症)。C6の指標筋は手関節背屈筋(長・短橈側手根伸筋)なので、筋力評価で合うのは右手関節背屈力の低下。三角筋はC5、上腕二頭筋はC5・6、小指外転筋はT1(C8)で、しかも症例文が挙上障害なし・ボタンかけ正常と書いて三角筋と手内筋が保たれていることを示している。
神経根の高位と指標筋(key muscle)の対応を知っているか。C5=肘屈筋・三角筋、C6=手関節背屈筋、C7=肘伸筋、C8=指屈筋、T1=小指外転筋などの手内筋。さらに症例文の「挙上障害なし」「ボタンかけ正常」を筋力所見の否定材料として読めるか。
神経根症では障害された根が支配する筋に分節性の筋力低下が出る。前腕橈側〜母指・示指のしびれはC6皮膚分節で、C6の指標筋は手関節背屈(橈側手根伸筋)。したがって右手関節背屈力の低下がこの症例に合う筋力所見である。三角筋はC5の指標筋で、症例文は「右上肢の挙上障害はない」と明記しているので三角筋の高度低下(MMT2)はあり得ない。上腕二頭筋はC5・6で、C6根症でもやや弱くなりうるが、肘屈曲がMMT2(重力に抗せない)ほど落ちるのは神経根症の像としては重すぎ、挙上や日常動作が保たれる記述とも合わない。小指外転筋はT1(C8)の尺側の手内筋で、ボタンかけ(手の巧緻運動)が正常という記述はこれが保たれていることを示す。
C5とC6の指標筋の混同(三角筋・上腕二頭筋がC5、手関節背屈がC6、上腕三頭筋がC7)と、MMTの段階の読み違い。MMT2は重力を除けば全可動域を動かせるが重力には抗せない段階で、神経根症で三角筋や上腕二頭筋がここまで落ちるのは例外的。症例文の「挙上障害なし」「ボタンかけ正常」は、三角筋と手内筋が保たれていると読む否定材料。
頸髄損傷のリハビリテーションで使う指標筋(key muscle)は、C5肘屈筋、C6手背屈筋、C7肘伸筋、C8中指深指屈筋、T1小指外転筋。頸椎症性神経根症の高位診断も同じ対応で考える。C6根症は頻度が高く、前腕橈側〜母指・示指の知覚低下、腕橈骨筋腱反射・上腕二頭筋反射の低下、手関節背屈力の低下がそろえばC6と言える。C7なら中指の知覚、上腕三頭筋反射、肘伸展・手関節掌屈の筋力低下、C8なら小指側の知覚と指の屈曲・手内筋の低下へずれていく。
MMT2という具体的な数値を置いて「検査らしさ」で1・2を選ばせる作りと、尺側(小指外転筋)を混ぜて高位を曖昧にする作り。解法は、(1) 症例からC6を確定、(2) C6の指標筋=手関節背屈、(3) 症例文の否定材料(挙上可・ボタンかけ可)で三角筋と手内筋を消す。
右C6神経根症の症例。指標筋はC5肘屈筋(上腕二頭筋)・三角筋、C6手関節背屈筋、C7肘伸筋、C8指屈筋、T1小指外転筋。したがって筋力評価で合うのは右手関節背屈力の低下。症例文は挙上障害なし(三角筋温存)、ボタンかけ正常(手内筋温存)と書いており、三角筋MMT2と小指外転筋力低下は否定される。上腕二頭筋MMT2は高度すぎて神経根症の像に合わない。高位診断は、皮膚分節・腱反射・指標筋の3点を一致させて行う。