次の症例の病証でみられるのはどれか。「50歳の男性。炎天下の作業で熱中症になった。1週間後から、不眠、頬の発赤、午後の微熱がみられる。脈は細数を認める。」
正答:3
正答:3
熱中症(暑邪)で気と津液を消耗した後、不眠・頬の紅潮・午後の微熱・脈細数が残っているのは、陰液が損なわれて虚熱が生じた陰虚内熱の証。陰虚でみられるのは五心煩熱。正答は3。
暑邪の耗気傷津から陰虚へ進む病機を読み、陰虚の所見(五心煩熱・盗汗・潮熱・頬紅・舌紅少苔・脈細数)を気虚(息切れ・胖大舌)や血瘀(刺痛)と区別できるか。
暑邪は炎熱性・昇散性で大量の発汗により気と津液を消耗する(耗気傷津)。本例は熱中症の後、津液・陰液の不足が残り、陰が陽を抑えられずに虚熱が生じている。虚熱は午後から夕方にかけての微熱(潮熱)、頬の紅潮、手足のひら・胸中のほてり(五心煩熱)、寝汗(盗汗)、不眠(陰虚で心神が養われず虚火が擾す)として現れ、舌は紅で苔は少なく、脈は細数。したがって本例でみられるのは五心煩熱。息切れは気虚の症状で、暑邪直後の気陰両虚期なら出うるが、設問の1週間後の所見(頬紅・午後微熱・脈細数)は陰虚内熱を示す。胖大舌は気虚・陽虚・痰湿の舌で、陰虚は痩せた紅舌。胸部の刺痛は血瘀。
熱中症=暑邪=気と津液を傷る、という病因から気虚(息切れ)を選びやすい。症例の「1週間後」「頬の発赤・午後の微熱・脈細数」は虚熱の像で、陰虚が前面に出ている。実熱(高熱・口渇・脈洪数)と虚熱(微熱・潮熱・脈細数)の区別、気虚と陰虚の区別(汗・舌・脈)を押さえる。
陰虚の一般像:午後の潮熱、五心煩熱、盗汗、頬部紅潮、口や咽の乾き、不眠、舌紅少苔、脈細数。臓別では肺陰虚(から咳)、心陰虚(動悸・不眠)、肝陰虚(目の乾き・めまい)、腎陰虚(腰膝酸軟・耳鳴)、胃陰虚(嘈雑・空腹感があるが食べられない)。暑邪による病では、暑熱(高熱・大汗・大渇)→気陰両虚(倦怠・息切れ・口渇)→陰虚内熱と推移しうる。治療は滋陰清熱で太渓・照海・三陰交・復溜などに補法。
病因(暑邪の耗気)で気虚へ誘導し、症例の所見(虚熱)で陰虚と読ませる二段構え。解法は、(1) 所見から虚熱・陰虚を同定、(2) 陰虚の症状(五心煩熱)を選ぶ、(3) 気虚・血瘀・痰湿の所見を消す。
炎天下の熱中症で暑邪に気と津液を消耗された後、不眠・頬の発赤・午後の微熱・脈細数が残る症例は、陰液不足で虚熱が生じた陰虚内熱。陰虚でみられるのは五心煩熱で、潮熱・盗汗・頬紅・舌紅少苔と組になる。息切れは気虚、胖大舌は気虚・痰湿、胸部の刺痛は血瘀の所見で陰虚ではない。