次の症例で最も適切な疾患はどれか。「75歳の女性。円背で胸腰椎移行部に圧痛を認める。15年前に胃癌の既往がある。脊椎エックス線像で陳旧性の圧迫骨折を認める。血液検査やMRI検査で異常はない。」
正答:1
正答:1
75歳女性、円背、胸腰椎移行部の圧痛、陳旧性圧迫骨折。血液検査もMRIも異常なし。骨粗鬆症。正答は1。
血液検査とMRIが正常であることを手がかりに、骨の疾患を鑑別できるか。
閉経後の女性では骨吸収が骨形成を上回り、骨量が減って骨の微細構造がもろくなる。これが骨粗鬆症で、骨の質と量が減るだけなので血液検査は正常のことが多い。椎体の前方がつぶれる圧迫骨折を胸腰椎移行部で繰り返し、円背となる。本例は陳旧性、つまり古い圧迫骨折で、MRIで新しい骨髄の変化や腫瘍性の所見がない。ここが決め手で、転移性骨腫瘍や多発性骨髄腫ならMRIや血液検査に異常が出る。骨軟化症は石灰化の障害なので血液のカルシウム・リン・アルカリホスファターゼに異常が出る。なお胃切除後はカルシウムとビタミンDの吸収が落ちて骨粗鬆症を起こしやすく、15年前の胃癌の既往は転移よりむしろこの背景として読む。
癌の既往という記述に引かれて転移性骨腫瘍を選びやすい。しかし本問はMRIと血液検査がともに正常と明記しており、腫瘍性・代謝性の疾患はここで落ちる。残るのは検査に出にくい骨粗鬆症。既往歴は転移を疑わせる罠であると同時に、胃切除による吸収低下という骨粗鬆症の背景でもある。
骨粗鬆症の圧迫骨折は胸腰椎移行部(第11胸椎〜第2腰椎)に好発する。上位胸椎や仙骨に単発する骨折、安静時痛や夜間痛、体重減少を伴う場合は転移性骨腫瘍を疑い、医師への紹介が必要になる。鍼灸では骨折部を強く圧迫せず、傍脊柱筋の緊張緩和と姿勢指導、転倒予防を中心にする。骨粗鬆症の危険因子は加齢、閉経、やせ、喫煙、飲酒、ステロイド、胃切除後、カルシウムとビタミンDの摂取不足。
癌の既往を入れて転移を疑わせ、検査所見で否定する。解法は、(1) 検査結果の記述を先に読む、(2) 検査に異常が出るはずの疾患を消す、(3) 残った疾患が年齢・性別・部位と合うかを確認する。
高齢女性の円背と胸腰椎移行部の陳旧性圧迫骨折で、血液検査もMRIも正常なら骨粗鬆症。骨の量が減るだけなので検査に出にくい。血液に異常が出るのが骨軟化症と多発性骨髄腫、MRIに出るのが転移性骨腫瘍と多発性骨髄腫。胃癌の既往は転移を疑わせる罠だが、胃切除後の吸収低下による骨粗鬆症の背景としても読める。