次の症例で最も考えられる疾患はどれか。「76歳の女性。1年ほど前から特に誘因なく右手がしびれ、その後、左手にも出現。物をつかみにくく、歩行もぎこちなくなった。両側下肢の腱反射は亢進。」
正答:2
正答:2
両手のしびれが片側から反対側へ広がり、物をつかみにくく歩行もぎこちない。両下肢の腱反射は亢進。頸椎症性脊髄症。正答は2。
上肢の症状に下肢の錐体路徴候が加わることを、脊髄の障害と読めるか。
頸椎の変性で脊柱管が狭くなり脊髄そのものが圧迫されると、脊髄より下位のすべての支配域に症状が出る。上肢では手指のしびれと巧緻運動障害(箸やボタンが使いにくい、物をつかみにくい)が両側性に現れ、下肢では痙性歩行となり、錐体路が障害されるため腱反射が亢進する。本例は片手から反対の手へ広がり、下肢の腱反射が亢進しているので、障害の場は神経根や末梢神経ではなく脊髄。頸椎症性神経根症なら一側の皮膚分節に沿った症状で腱反射は減弱し、下肢には出ない。胸郭出口症候群も末梢での圧迫なので下肢に錐体路徴候は出ない。
頸椎症性脊髄症と神経根症は名前が似ているが、障害の場が脊髄か神経根かで所見が逆になる。脊髄なら両側性・下肢症状あり・腱反射亢進、神経根なら一側性・皮膚分節性・腱反射減弱。腱反射の向きが最も分かりやすい分かれ目。
頸椎症性脊髄症では手指の巧緻運動障害を確かめる十指テストや、ホフマン反射・バビンスキー反射などの病的反射が参考になる。進行すると膀胱直腸障害が出ることがあり、この段階では手術適応となるため鍼灸単独で経過を見てはならない。鍼灸の対象になるのは頸肩部の筋緊張や随伴する疼痛で、脊髄症状そのものの改善を目的としない。上肢に痛みを生じる疾患には頸椎からの関連痛、頸椎症性脊髄症・神経根症、胸郭出口症候群、肩関節周囲や肩甲帯の筋からの関連痛があり、どこに原因があるかを分けて考える。
上肢の症状を主訴として示し、下肢の所見を最後に一言だけ添える。解法は、(1) 症状が片側か両側か、(2) 下肢に症状があるか、(3) 腱反射が亢進か減弱か、で障害の高さを決める。
両手のしびれ、物をつかみにくい巧緻運動障害、ぎこちない歩行、両下肢の腱反射亢進。上肢と下肢の両方に出て腱反射が亢進していれば脊髄の障害で、頸椎症性脊髄症。神経根症なら一側の皮膚分節に沿い腱反射は減弱、胸郭出口症候群は上肢だけ、外傷性頸部症候群は外傷歴が要る。