次の症例で絞扼部位近傍への治療穴として適切なのはどれか。「17歳の女子。受験勉強で問題集に書き込みながら問題を数多く解いているうちに、手背を除く利き手の尺側にしびれを感じるようになった。フロマン徴候陽性。」
正答:4
正答:4
利き手の尺側がしびれるが手背は除かれ、フロマン徴候が陽性。手関節部で尺骨神経が絞扼されている。この部位に最も近い治療穴は神門。正答は4。
感覚障害の範囲から尺骨神経の絞扼の高さを決め、その部位に当たる経穴を選べるか。
フロマン徴候は母指内転筋の麻痺を示し、尺骨神経の障害を意味する。問題は絞扼の高さで、これは手背の感覚が保たれているかで決まる。尺骨神経の背側手枝は手関節よりも近位で分かれて手背尺側の皮膚に分布するため、手関節部で絞扼されると手背の感覚は残り、手掌側と手内在筋だけが障害される。手関節部で尺骨神経が通るのが尺骨神経管(ギヨン管)で、豆状骨と有鉤骨鉤の間にある。神門は手関節前内側、尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋上に取る経穴で、この絞扼部の直上にあたる。肘部管で絞扼された場合(高位麻痺)は背側手枝も巻き込まれるので手背にもしびれが出る。
尺骨神経といえば肘部管、と反射的に小海を選びやすい。分かれ目は手背の感覚。背側手枝は手関節より近位で分岐するので、手背が保たれていれば絞扼はそれより遠位、つまり手関節部にある。「手背を除く」という一語がこの問題の全部といってよい。
上肢の絞扼性神経障害は、障害される神経と高位で整理する。橈骨神経の高位麻痺は下垂手、低位(後骨間神経)麻痺は下垂指で感覚障害を伴わない。正中神経の高位麻痺は円回内筋症候群・前骨間神経麻痺、低位麻痺は手根管症候群。尺骨神経の高位麻痺は肘部管症候群、低位麻痺はギヨン管症候群。ギヨン管症候群は工具を強く握り続けたり、長時間の自転車走行でハンドルに小指球を押しつけたりして起こる。
神経名を特定させる徴候を出したうえで、高位を分ける一語を症例文に埋め込む。解法は、(1) 徴候から神経を決める、(2) 感覚障害の範囲から高位を決める、(3) その高位を通る部位の経穴を選ぶ。
フロマン徴候陽性で尺骨神経の障害。手背が除かれることから、背側手枝が分かれた後、つまり手関節部での絞扼(尺骨神経管=ギヨン管症候群)と分かる。手関節掌側横紋上、尺側手根屈筋腱の橈側縁にある神門がこの部位の直上。肘部管なら手背にもしびれが出るので小海は合わない。