次の症例で最も適切な疾患はどれか。「45歳の男性。長時間のパソコン作業が続き、眼が疲れる。右頸部から肩、前腕にかけて鈍痛としびれがある。筋力や知覚に異常はなく、頸部の運動制限も明確でない。スパーリングテスト、ルーステストは陰性。」
正答:2
正答:2
長時間のパソコン作業で眼が疲れ、頸から肩・前腕に鈍痛としびれ。筋力・知覚は正常、頸部の運動制限もなく、スパーリングテストもルーステストも陰性。VDT症候群。正答は2。
神経学的所見と誘発テストがすべて陰性であることから、作業に伴う機能的な障害と判断できるか。
神経根が圧迫されていればスパーリングテストが陽性となり、その皮膚分節に知覚障害と筋力低下、頸部の運動制限が出る。胸郭出口で腕神経叢や鎖骨下動脈が圧迫されていればルーステストが陽性となる。本例はどちらも陰性で、知覚も筋力も正常。つまり神経の圧迫を示す所見がひとつもない。残るのは、長時間の同一姿勢と画面注視による頸肩腕の筋疲労と眼精疲労、すなわち情報機器作業(VDT作業)に伴う健康障害である。眼が疲れるという訴えが同時にあることも、この判断を支える。作業姿勢、作業時間、休憩の取り方、画面の位置と明るさの見直しが対策になる。
頸から前腕にかけてのしびれという記述だけを見ると、神経の圧迫を疑いたくなる。しかし本問は誘発テストの陰性と神経所見の正常をわざわざ並べている。陰性所見の列挙は「器質的な圧迫はない」という出題者のメッセージであり、そこから作業関連の機能的障害へ進むのが読み筋。
情報機器作業に伴う健康障害は、眼(眼精疲労、ドライアイ)、筋骨格系(頸肩腕障害、腰痛)、精神(ストレス)に分けられる。産業保健では作業姿勢、連続作業時間の制限、休憩、照明、画面と目の距離などがガイドラインで示されている。鍼灸では頸肩背部の筋緊張に対し天柱・風池・肩井・肩外兪・膏肓など、眼症状に対し攅竹・太陽・睛明周囲などを用い、作業環境の指導を併せる。
神経症状を思わせる訴えを出し、誘発テストと神経所見をすべて陰性・正常にする。解法は、(1) 陽性所見と陰性所見を分けて書き出す、(2) 陰性所見で否定される疾患を消す、(3) 残った説明が誘因(作業内容)と合うかを確認する。
長時間のパソコン作業で眼が疲れ、頸から肩・前腕が鈍く痛みしびれる。しかしスパーリングもルースも陰性、知覚も筋力も正常、頸部運動制限もない。神経の圧迫を示す所見が皆無なので、情報機器作業(VDT作業)に伴う健康障害と判断する。対策は作業姿勢・作業時間・休憩・画面環境の見直し。