「75歳の女性。主訴は右胸痛。4週間前に右胸部に水疱が現れた。投薬で水疱は消失したが、胸痛が残っている。夫の介護で抑うつ感があり、過食、倦怠感、足のだるさもある。舌は胖大、厚膩苔、脈は滑を認める。」主訴の誘因として最も考えられるのはどれか。
正答:1
正答:1
水疱が消えたあとに残る右胸痛は帯状疱疹後の神経痛。誘因は免疫の低下を招くもので、夫の介護による過労。正答は1。
症例文に書かれた生活背景のうち、どれが発症の誘因として働いたかを選べるか。
水疱が片側の胸部に帯状に現れ、投薬で水疱は消えたのに痛みだけが残る経過は、帯状疱疹とそれに続く神経痛の典型である。水痘のウイルスは初感染のあと脊髄後根神経節に潜んでおり、免疫が落ちると再び活動を始めて、支配する皮膚分節に皮疹と痛みを起こす。したがって誘因は免疫を落とすもの、すなわち加齢、過労、精神的ストレス、悪性腫瘍、免疫抑制薬などである。本例は75歳という年齢に加え、夫の介護という記述があり、身体的にも精神的にも負担が続いている。抑うつ感もその現れ。したがって誘因として最も考えられるのは過労。
症例文には過食・倦怠感・足のだるさなど東洋医学の弁証に使う所見も並ぶが、本問が聞いているのは発症の誘因。弁証の材料と誘因の材料を分けて読む。介護という一語が、過労とストレスの両方を指していることに気づけるかが分かれ目。
帯状疱疹は片側の1〜2神経分節に沿って、有痛性の紅斑と小水疱が帯状に出る。胸部が最も多い。皮疹が治っても痛みが3か月以上残るものを帯状疱疹後神経痛といい、高齢者ほど残りやすい。免疫不全や播種性の場合は空気感染の対策が必要とされる。鍼灸は皮疹が消退した後の神経痛が対象で、罹患神経分節の夾脊穴、肋間に沿った局所穴、対応する背部兪穴を用いる。急性期の水疱がある時期は皮膚を傷つけないよう直接の刺鍼を避ける。
生活背景を複数並べ、そのうち一つだけが疾患の機序とつながるようにする。解法は、(1) 疾患を特定する、(2) その疾患の発症機序を思い出す、(3) 機序に直接つながる背景を選ぶ、(4) 他の記述で否定される選択肢を消す。
片側胸部の水疱のあとに痛みだけが残るのは帯状疱疹後の神経痛。原因は脊髄後根神経節に潜んでいたウイルスが再び活動を始めることで、誘因は免疫を落とすもの。本例では夫の介護という身体的・精神的負担、すなわち過労。過食の記述があるので低栄養は否定され、運動不足やアレルゲン曝露は機序とつながらない。