「75歳の女性。主訴は右胸痛。4週間前に右胸部に水疱が現れた。投薬で水疱は消失したが、胸痛が残っている。夫の介護で抑うつ感があり、過食、倦怠感、足のだるさもある。舌は胖大、厚膩苔、脈は滑を認める。」治療方針として最も適切なのはどれか。
正答:3
正答:3
舌は胖大で厚膩苔、脈は滑。過食、倦怠感、足のだるさもそろい、痰湿が停滞している。治療方針は痰湿を除くこと。正答は3。
舌診と脈診の所見から、どの病理産物を除くべきかを決められるか。
治療方針を問う設問では、舌脈が最も強い根拠になる。舌が胖大なのは水湿が停滞して舌体がむくんだ状態、苔が厚膩なのは湿濁が中焦にこもった状態、脈が滑なのは痰湿や食滞など有形の邪が脈中を流れる状態を示す。この3つはいずれも痰湿を指す。症状の側でも、過食は脾胃に負担をかけて運化を失調させ痰湿を生み、倦怠感と足のだるさは湿が四肢を重くする所見にあたる。したがって治療方針は痰湿を除くこと。抑うつ感があるので気を巡らせたくなるが、舌脈が示しているのは気滞ではなく痰湿の停滞である。
症状のうち抑うつ感だけを取ると肝鬱に見え、痛みが残ることだけを取ると瘀血に見える。しかし舌脈が一貫して痰湿を指しているので、そこを軸にする。舌の胖大・厚膩苔・滑脈は3つそろって痰湿の代表的所見であり、これらが並んでいるときに他の方針を選ぶ根拠は弱い。
痰湿は脾の運化失調から生じる病理産物で、過食、甘いものや脂っこいものの摂りすぎ、飲酒、運動不足が背景になる。治法は健脾化湿・化痰で、豊隆(胃経の絡穴、化痰の要穴)、陰陵泉、脾兪、中脘、足三里、三陰交などを用いる。古典には「肥えたる人のめまいは気虚と湿痰とに属す」とあり、体格と痰湿を結びつける見方が示されている。帯状疱疹後神経痛の局所治療と並行して、この全身の証に対する治療を行う。
情志の記述を混ぜて気滞の方針を選ばせようとする。解法は、(1) 舌診の所見を書き出す、(2) 脈診の所見を書き出す、(3) 両者が一致して指す病理を治療方針にする、(4) 症状のうち一部だけを拾わない。
舌が胖大で厚膩苔、脈が滑。この3つはいずれも痰湿の停滞を示し、過食・倦怠感・足のだるさとも一致する。したがって治療方針は痰湿を除くこと。抑うつ感から気血を巡らす方針に引かれやすいが、舌脈が示すのは気滞ではなく痰湿。心陽虚や胃陰虚の所見はない。