「67歳の男性。主訴は動作時の呼吸困難。痩せて樽状胸郭を呈している。呼吸機能検査で1秒率の低下、胸部エックス線検査で肺野の透過性亢進を認めた。ブリンクマン指数は940。」定喘穴に対する2Hzの持続的な鍼通電療法により呼吸困難が改善した。中枢を介した呼吸困難の改善に最も関与すると考えられるのはどれか。
正答:4
正答:4
COPDの症例(問159と共通)に、定喘穴へ低頻度(2Hz)の鍼通電を行って呼吸困難が改善した。低頻度・高強度の鍼通電は中枢で内因性オピオイドを放出させ、その代表であるβエンドルフィンは鎮痛だけでなく呼吸困難の自覚を和らげる。正答はβエンドルフィン。
低頻度鍼通電と内因性オピオイド(βエンドルフィン・エンケファリン・ダイノルフィン)の関係、内因性オピオイドが呼吸困難の改善にも関わること、そしてナロキソンが拮抗薬、メラトニンが松果体ホルモンであることを区別できるか。
鍼通電は一般に低頻度(0.5〜5Hz)で高強度の刺激を与え、Aδ・C線維を持続的に興奮させて下行性痛覚抑制系やストレス誘発鎮痛など中枢性の機序を賦活する。そこで働く抑制性物質の中心が内因性オピオイドで、βエンドルフィン(μ・δ受容体に親和)、エンケファリン(δ受容体)、ダイノルフィン(κ受容体)がある。内因性オピオイドは鎮痛以外に呼吸困難の自覚を改善する働きも持ち、COPDなどの呼吸困難に対して定喘・合谷・足三里などを取穴し、回旋・捻転手技や2〜15Hz・30分程度の鍼通電を行う。本問の「2Hzの持続的な鍼通電」「中枢を介した改善」という条件は、この低頻度鍼通電→中枢のβエンドルフィン放出という流れを指している。ナロキソンはオピオイド受容体の拮抗薬で、投与すれば鍼の効果を打ち消す側。メラトニンは松果体から分泌され概日リズムを調節するホルモンで、呼吸困難の機序とは別。
ナロキソンは「オピオイド」の名を含む文脈で出るため物質名だけ見て選びがちだが、拮抗薬であり効果を消す側。刺激頻度と物質の関係も整理する。低頻度(数Hz)ではβエンドルフィン・エンケファリン、高頻度(100Hz前後)ではダイノルフィンが関与するとされ、高頻度低強度の経皮的電気刺激(TENS)はAβ線維を介した脊髄分節性鎮痛で、機序が違う。「中枢を介した」という条件は、局所の軸索反射や筋ポンプではなく脳幹・視床下部レベルの機序を指す。
内因性オピオイドは痛覚伝導路を抑制する抑制性伝達物質で、下行性痛覚抑制系(中脳中心灰白質→延髄→脊髄後角)で働く。鍼鎮痛がナロキソンで抑制されることから内因性オピオイドの関与が示された。呼吸困難に対しては、中枢性のオピオイドが呼吸困難感(息苦しさの自覚)を和らげるため、COPDの緩和領域でも内因性オピオイドを賦活する鍼の利用が教科書に載る。COPDの基本病態は樽状胸郭・1秒率低下・透過性亢進・高いブリンクマン指数で示される慢性の気流閉塞で、鍼灸は西洋医学的治療の補助として呼吸困難の軽減や呼吸補助筋の緊張緩和を狙う。
オピオイド関連の語(ナロキソン・ノシセプチン)を2つ並べ、βエンドルフィンとの区別を問う。ナロキソン=拮抗薬、ノシセプチン=教科書の内因性オピオイド3系統に無い、と切る。メラトニンは「中枢」「持続的」という語感で引っかける。解法は、(1) 2Hz=低頻度鍼通電→内因性オピオイド、(2) 3系統の中から選ぶ、(3) 拮抗薬を消す。
COPDの呼吸困難に対し、定喘穴へ2Hzの鍼通電を持続すると、Aδ・C線維の持続的興奮を介して中枢に内因性オピオイドが放出され、その代表であるβエンドルフィンが呼吸困難の自覚を和らげる。教科書は内因性オピオイドを鎮痛以外に呼吸困難の改善に使えるとし、定喘・合谷・足三里への手技または2〜15Hz・30分程度の鍼通電を挙げる。ナロキソンはオピオイド受容体拮抗薬で効果を打ち消す側、メラトニンは松果体の概日リズムホルモン、ノシセプチンは教科書の内因性オピオイド3系統に含まれない。