A 君(小学6年生)は病院に併設された院内学級に通いながら骨肉腫〈osteosarcoma〉の 治療を続けていた。現在、肺転移があり終末期にある。呼吸障害のため鼻腔カニューレで酸 素(2L/分)を吸入中である。A 君の食事摂取量は減っているが意識は清明である。 1週後に院内で卒業式が予定されている。A 君は「卒業式に出席したい」と話して いる。 看護師のA 君への対応として適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
終末期にあり、酸素を吸入中で、卒業式に出席したいと話す小学6年生への対応を問う。出席できるように準備しようと話すことである。
この問題で問われていること
終末期における本人の希望を、どう扱うかを判断できるか。
しくみから理解する
この子は、意識が清明で、自分の希望を明確に述べている。終末期では、残された時間をその人らしく過ごすことが目標になり、本人の希望を実現することが、看護の中心的な仕事になる。卒業式は、小学校生活の締めくくりであり、友人と過ごす最後の機会にもなる。院内で行われるため、移動の距離も短い。酸素の携帯、車椅子、休息の場所、そして急変時の対応を準備すれば、実現できる可能性が高い。「できるかどうか」ではなく、「どうすればできるか」を考える姿勢が求められる。
選択肢ごとの確認
両親に判断してもらおうと話すことは、本人の意思を親に委ねることになる。小学6年生であり、意識も清明で、自分の希望を述べている。もちろん両親とも相談するが、本人の前で「親が決めること」として扱えば、本人の意思を軽んじることになる。
「今の状態では出席は難しい」と話すことは、検討せずに諦めさせることになる。準備すれば実現できる可能性があり、また実現できなくても、その過程で何ができるかを一緒に考えることに意味がある。
「出席を決める前に体力をつけよう」と話すことも適切でない。終末期であり、体力の回復は望めない。むしろ、時間が限られている状況で、条件を課すことは、実現の機会を失わせることになる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、判断の委譲、諦め、そして条件の付加になる。いずれも、本人の希望を実現する方向ではない。終末期の看護では、「本人が望むことを、どうすれば実現できるか」を出発点にする。この事例では、1週間という時間があり、院内での行事であり、意識も清明という条件がそろっており、実現の可能性は十分にある。
理解を深める
終末期の子どもの希望を支える準備を整理する。この事例での具体的な準備=①医師との相談(参加の可否、注意点、そして急変時の対応の方針)、②酸素(携帯用ボンベの準備と、残量の確認)、③移動(車椅子、ストレッチャー、移動の経路と時間)、④体位と休息(座っていられる時間、休める場所の確保)、⑤付き添い(看護師の同行、家族の参加)、⑥苦痛の緩和(事前の鎮痛と、呼吸困難への備え)、⑦学校との調整(式の進行、本人の役割、時間の短縮、そして途中で退席できる配慮)、⑧本人の希望の確認(何をしたいか。式の全部か、一部か。誰と過ごしたいか)、⑨当日の体調に応じた変更の余地(無理をさせない、その場で判断する)。加えて、実現できなかった場合の代替も考えておく(病室で式の様子を中継する、クラスメイトに来てもらう、後日に卒業証書を受け取る)。子どもの願いを叶える取り組み=重い病気の子どもの願いを実現する活動が、国内外の団体により行われている。医療者が「無理だ」と決めるのではなく、実現の方法を探すことが、その子と家族にとって、かけがえのない時間を作る。看取りの後、家族にとっても、その体験は大きな支えになる。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が判断の委譲・諦め・条件の付加である。どうすればできるかを考える姿勢で切る。
5分で振り返る
①終末期の目標は、残された時間をその人らしく過ごすこと。本人の希望を実現することが看護の中心になる。②意識が清明で自分の希望を述べている以上、本人の意思を尊重する。③準備=医師との相談、酸素の携帯、移動の手段と経路、休息の場所、付き添い、苦痛の緩和、学校との調整、途中退席の配慮。④「できるかどうか」ではなく「どうすればできるか」を考える。⑤親に判断を委ねることは、本人の意思を軽んじることになる。⑥終末期に体力の回復を条件にすることは、実現の機会を失わせる。⑦実現できない場合の代替(中継、クラスメイトの訪問、後日の授与)も考えておく。
1分チェック
- 終末期の子どもの希望には。→ 実現できるように準備しようと話す。
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