次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(47歳、男性、会社員)は妻と2人暮らしで、自宅の室内で犬を飼っている。15年前に慢性糸球体腎炎〈chronicglomerulonephritis〉と診断され、徐々に腎機能低下が認められたので、2年前から慢性腎不全〈chronicrenalfailure〉のため血液透析療法を週3回受けている。今回、弟から腎臓の提供の申し出があり、生体腎移植の目的で入院した。入院3日、Aさんの生体腎移植手術は予定通り終了した。
A さんの手術直後に観察すべき項目で優先度が高いのはどれか。
公式正答:1
解説
生体腎移植手術直後に観察すべき項目で優先度が高いものを問う。尿量である。
この問題で問われていること
移植された臓器が働いているかを、何で確かめるかを判断できるか。
しくみから理解する
腎移植では、移植した腎臓が血流を得て機能を始めれば、直ちに尿の産生が始まる。手術中の血流の再開とともに尿が出ることも多い。したがって、尿量は、移植腎が働いているかを最も直接に、そして早く示す指標になる。尿量が少ない、あるいは出ないという状況は、移植腎の機能の遅延、血管の吻合部の問題(血栓、狭窄)、尿管の閉塞、あるいは超急性拒絶反応を示唆し、直ちに医師へ報告して精査を要する。術後は、時間ごとに尿量を測定し、性状(血尿の程度)とあわせて記録する。あわせて、水分出納、体重、血圧、そして血清クレアチニンの推移を追う。
選択肢ごとの確認
血糖値も観察の対象になる。副腎皮質ステロイドとタクロリムスは血糖を上げるため、移植後の糖尿病(移植後糖尿病)が生じうる。ただし、手術直後に最も優先されるのは、移植腎が機能しているかの確認になる。
白血球数も、感染と拒絶反応の指標として重要になる。ただし、変化が現れるまでに時間を要し、手術直後の判断には向かない。
シャント音は、血液透析のために造設した内シャントの開存を確認するものになる。移植後もしばらくはシャントを温存することが多く、観察の対象にはなるが、手術直後の優先度としては尿量に劣る。移植腎の機能が安定すれば、シャントの閉鎖を検討する。
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混同しやすいポイント
「移植した臓器が働いているか」を最も速く示す指標を選ぶ、という考え方になる。腎臓の主な仕事は尿を作ることであり、その産物である尿量が直接の答えになる。誤肢は、いずれも観察の対象ではあるが、移植腎の機能を直接には示さないか、変化が現れるまでに時間がかかる。臓器移植の設問では、「その臓器の機能を何で測るか」を考える。
理解を深める
腎移植後の看護を整理する。手術直後=尿量(時間尿)、水分出納、体重、バイタルサイン、出血、ドレーンの排液、疼痛、そして移植腎の部位(通常は腸骨窩に置かれる)の状態。移植腎を圧迫しない体位をとる。拒絶反応=超急性(術中から数分〜数時間。既存の抗体による。現在は術前の検査でほぼ回避できる)、急性(数日〜数か月。発熱、尿量の減少、移植部の腫脹と圧痛、血清クレアチニンの上昇)、慢性(数か月〜数年。緩やかな腎機能の低下)。免疫抑制薬=カルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリン)、代謝拮抗薬(ミコフェノール酸モフェチル)、副腎皮質ステロイド、そして生物学的製剤の組み合わせ。生涯にわたる服薬が必要になる。合併症=感染(細菌、ウイルス:サイトメガロウイルス、BKウイルス、真菌、そして日和見感染)、悪性腫瘍(皮膚癌、リンパ増殖性疾患)、移植後糖尿病、高血圧、脂質異常症、骨粗鬆症。ドナーへの看護も重要で、健康な人が手術を受けるという特殊性から、意思決定の過程での支援、術後の合併症の観察、そして長期の腎機能のフォローが求められる。家族間の移植では、断りにくさや、結果が思わしくなかった場合の心理的な負担にも配慮が要る。
間違えやすい考え方
優先度を問う型で、誤肢が観察の対象だが移植腎の機能を直接示さないものである。臓器の機能を何で測るかで切る。
5分で振り返る
①腎移植では、血流が再開すると多くは速やかに尿の産生が始まる。ただし血流の再開と機能の発現は別で、生体腎移植でも移植腎機能の遅延は起こりうる。尿量は移植腎の機能を最も直接に示す指標であり、灌流、閉塞、機能の遅延を合わせて評価する。②尿が出ない場合=移植腎機能の遅延、血管吻合部の血栓や狭窄、尿管の閉塞、超急性拒絶反応を疑う。③時間ごとに尿量と性状を測定し、水分出納、体重、血圧、血清クレアチニンを追う。④拒絶反応=超急性(術中〜数時間)、急性(数日〜数か月。発熱、尿量減少、移植部の腫脹と圧痛)、慢性(数か月〜数年)。⑤免疫抑制薬は生涯続ける。⑥合併症=感染、悪性腫瘍、移植後糖尿病、高血圧、脂質異常症。⑦移植腎は腸骨窩に置かれるため、圧迫しない体位をとる。
1分チェック
- 腎移植の手術直後に最優先で観察するのは。→ 尿量(移植腎が働いているかを最も速く示す)。
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