次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(47歳、男性、会社員)は妻と2人暮らしで、自宅の室内で犬を飼っている。15年前に慢性糸球体腎炎〈chronicglomerulonephritis〉と診断され、徐々に腎機能低下が認められたので、2年前から慢性腎不全〈chronicrenalfailure〉のため血液透析療法を週3回受けている。今回、弟から腎臓の提供の申し出があり、生体腎移植の目的で入院した。入院3日、Aさんの生体腎移植手術は予定通り終了した。
A さんは順調に回復し、移植後の拒絶反応もなく退院することになった。A さ んは「腎臓が悪くなってから気を付けないといけないことが多かったのですが、移 植してこれまでの制約がなくなりますね」と話した。 A さんの退院後の生活で継続が必要なのはどれか。
公式正答:4
解説
腎移植後、拒絶反応もなく退院する患者について、退院後の生活で継続が必要なものを問う。体重の管理である。
この問題で問われていること
移植によって解除される制約と、続く管理を区別できるか。
しくみから理解する
移植腎が機能すれば、透析中に必要だった厳しい制限の多く(水分、カリウム、リンの制限、そして週3回の通院)は緩和される。しかし、体重の管理は続ける必要がある。理由は3つある。①免疫抑制薬、とくに副腎皮質ステロイドは食欲を増進させ、体重が増えやすい。②肥満は、移植後糖尿病、高血圧、脂質異常症のリスクを高め、これらが移植腎の機能を長期的に損なう。③体重の変化は、体液の貯留(移植腎の機能の低下)を早期に捉える指標にもなる。したがって、毎日決まった条件で体重を測り、記録することが、退院後の自己管理の中心の一つになる。
選択肢ごとの確認
蛋白質の摂取制限は、移植後には原則として不要になる。むしろ、術後の回復と、ステロイドによる蛋白の異化に対応するため、適切な量の蛋白質が必要になる。透析中の制限(あるいは保存期の腎不全での制限)とは考え方が変わる。ただし、移植腎の機能が低下してきた場合には、改めて調整が必要になる。
週3回の通院は、血液透析のためのものであり、移植後には不要になる。移植後の外来受診は、当初は週1回程度から始まり、状態が安定するにつれて2週に1回、月1回、そして数か月に1回へと間隔が延びていく。ただし、生涯にわたる受診の継続は必要になる。
水分の制限も、移植後には原則として不要になる。むしろ、移植腎の血流を保ち、尿量を確保するために、十分な水分の摂取が勧められる(1日2,000mL程度を目安とすることが多い)。透析中の制限とは正反対の方向になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも透析中に必要だった管理であり、移植後には解除または方向が逆になるものになる。この事例の患者が「これまでの制約がなくなりますね」と述べているのは、その点では正しい理解になる。ただし、すべてがなくなるわけではなく、新しい管理が始まる。何が終わり、何が続き、何が新しく始まるのかを整理して伝えることが、看護の役割になる。
理解を深める
移植後の自己管理を整理する。続くもの/新しく始まるもの=①免疫抑制薬の確実な服薬(生涯)、②感染予防、③体重、血圧、体温、尿量の自己測定と記録、④定期的な受診と検査(血中濃度、腎機能、血糖、脂質、悪性腫瘍の検診)、⑤食事(塩分の適正化、バランス、生ものへの注意、グレープフルーツの回避)、⑥禁煙、節酒、⑦日光の防御、⑧異常時の連絡(発熱、尿量の減少、移植部の痛み、体重の急な増加、下痢、皮疹)。終わるもの=透析、水分とカリウムの厳しい制限、週3回の通院、シャントの管理(機能が安定すれば閉鎖を検討する)。心理的な側面としては、移植への感謝と、ドナーへの負い目、そして「もし駄目になったら」という不安が混在することがある。生体腎移植では、ドナーが家族であるため、関係性への影響も生じうる。看護では、身体の管理だけでなく、こうした気持ちを話せる場をつくることも支援に含まれる。就労と社会復帰の支援、そして医療費の助成についての情報提供も、生活の再建に役立つ。移植後の抗免疫療法は自立支援医療(更生医療)の対象になる。なお特定疾病療養受療証(長期高額疾病の高額療養費の特例)は、人工透析を実施している慢性腎不全などが対象で、移植が成功して透析を離脱すれば対象から外れる。身体障害者手帳の等級も、移植後の状態に応じて見直される。
間違えやすい考え方
継続の要否を問う型で、誤肢がすべて透析中の管理である。何が終わり何が続くかを分けて切る。
5分で振り返る
①移植後も体重の管理は続ける。理由=ステロイドによる食欲の増進、肥満が移植後糖尿病・高血圧・脂質異常症を招き移植腎を損なう、体重の変化が体液貯留を早期に捉える。②蛋白質の制限は移植後には原則不要(回復とステロイドによる異化に対応するため必要)。③水分は制限せず、むしろ十分に摂る(1日2,000mL程度が目安)。④週3回の通院は透析のためのもので不要になる。受診は当初週1回程度から徐々に延びる。⑤続くもの=服薬、感染予防、自己測定、定期受診、食事、禁煙、日光の防御。⑥終わるもの=透析、水分とカリウムの厳しい制限、シャントの管理。⑦生体腎移植ではドナーへの負い目など心理的な側面にも配慮する。
1分チェック
- 移植後も続けるのは。→ 体重の管理(薬による体重増加、生活習慣病、体液貯留の早期把握)。
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