次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(61歳、男性、会社員)はデスクワーク中心の仕事をしている。今朝、職場へ出勤したが、自分の机の位置や同僚の名前が分からない等の見当識障害があり、同僚に付き添われ救急外来を受診した。頭痛、嘔吐、めまいはない。現病歴:4年前に2型糖尿病〈diabetesmellitus〉と診断され、経口糖尿病薬が開始された。1年前から受type2診を自己判断で中断している。身体所見:身長170cm、体重100kg。体温38.6℃、呼吸数22/分、脈拍112/分、整、血圧108/64mmHg。対光反射(+)、瞳孔不同(-)。歩行可能。右第1趾に発赤、腫脹、異臭がある。検査所見:白血球19,200/μL、血糖904mg/dL、Na131mEq/L、K3.4mEq/L、ヘモグロビンA1c〈HbA1c〉9.2%、アンモニア49μg/dL、CRP22mg/dL。動脈血液ガス分析pH7.32。血漿浸透圧394mOsm/L。尿ケトン体(±)。
A さんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
見当識障害、体温38.6℃、血糖904mg/dL、血漿浸透圧394mOsm/L、尿ケトン体(±)、pH7.32という所見の61歳男性のアセスメントを問う。高浸透圧高血糖状態である。
この問題で問われていること
血糖、浸透圧、ケトン体、そしてpHの組み合わせで病態を特定できるか。
しくみから理解する
高浸透圧高血糖状態は、著しい高血糖と高浸透圧により、脱水と意識障害をきたす状態になる。特徴は、①血糖が著しく高い(おおむね600mg/dL以上)、②血漿浸透圧が高い(320mOsm/L以上)、③ケトン体は陰性または軽度、④アシドーシスは軽度(pH7.3以上)になる。2型糖尿病の高齢者に多く、感染、脱水、手術、そして薬剤(ステロイド、利尿薬)が誘因になる。この事例では、血糖904mg/dL、血漿浸透圧394mOsm/L、尿ケトン体陰性、pH7.32と、4つの条件がすべて当てはまる。右第1趾の感染(発赤、腫脹、異臭)と発熱が誘因になっている。
選択肢ごとの確認
肝性脳症ではない。アンモニアは49μg/dLで、基準値の範囲内(おおむね40〜80μg/dL)にある。また、肝疾患の既往も記載されていない。
小脳出血ではない。小脳出血では、突然の頭痛、嘔吐、めまい、そして運動失調(歩行の障害、体幹の動揺)が現れる。この事例では、頭痛、嘔吐、めまいがなく、歩行も可能で、瞳孔不同もない。
糖尿病ケトアシドーシスではない。この病態では、インスリンの絶対的な不足により脂肪が分解され、ケトン体が蓄積してアシドーシスをきたす。したがって、尿ケトン体が陽性となり、pHは7.3未満(多くは7.2以下)になる。この事例では、尿ケトン体が陰性で、pHも7.32と軽度の低下にとどまるため、当てはまらない。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
2つの急性合併症を、4つの指標で区別する。ケトアシドーシス=1型に多い、血糖250〜1,000mg/dL、ケトン体陽性、pH7.3未満、クスマウル大呼吸とアセトン臭。高浸透圧高血糖状態=2型の高齢者に多い、血糖600mg/dL以上、浸透圧320mOsm/L以上、ケトン体陰性から軽度、pH7.3以上、著しい脱水と意識障害。この事例は後者になる。誤肢に肝性脳症と小脳出血が置かれているのは、意識障害という主訴から鑑別を求める形になっている。事例文にある「アンモニア」「頭痛、嘔吐、めまいはない」「瞳孔不同なし」「歩行可能」という記述が、それぞれを除外する材料になる。
理解を深める
高浸透圧高血糖状態の管理を整理する。病態=インスリンの相対的な不足により高血糖となり、浸透圧利尿によって大量の水分と電解質が失われる。脱水が進むと血液が濃縮され、さらに血糖と浸透圧が上がるという悪循環に入る。ケトン体が増えにくいのは、わずかに残るインスリンの作用が脂肪の分解を抑えているためになる。誘因=感染症(この事例では糖尿病足病変)、脱水(口渇を感じにくい高齢者、飲水の不足)、手術と外傷、薬剤(副腎皮質ステロイド、利尿薬、一部の向精神薬)、そして経管栄養と高カロリー輸液。治療=①十分な輸液(脱水の補正が最優先。生理食塩液から開始する)、②少量持続のインスリンの静脈内投与(急激に血糖を下げると、脳浮腫を招く危険があるため緩やかに)、③電解質の補正(とくにカリウム。インスリンにより細胞内へ移動して低カリウム血症をきたす)、④誘因の治療(感染症への抗菌薬)。看護=意識レベル、バイタルサイン、水分出納、尿量、血糖、電解質、そして輸液の管理。回復後は、自己管理の再構築が課題になる。この事例のように、受診の中断が背景にある場合、なぜ中断したのか(自覚症状がない、費用、通院の負担、生活の変化、そして病気への向き合い方)を聞き取り、続けられる形を一緒に考える。
間違えやすい考え方
所見から病態を特定する型で、誤肢が別の意識障害の原因と、もう一つの急性合併症である。4つの指標で切る。
5分で振り返る
①高浸透圧高血糖状態=血糖600mg/dL以上、血漿浸透圧320mOsm/L以上、ケトン体は陰性か軽度、pH7.3以上。②2型糖尿病の高齢者に多く、感染、脱水、手術、薬剤が誘因になる。③ケトアシドーシス=1型に多い、ケトン体陽性、pH7.3未満、クスマウル大呼吸とアセトン臭。④肝性脳症はアンモニアの上昇と肝疾患、小脳出血は頭痛・嘔吐・めまい・運動失調で区別する。⑤治療=十分な輸液(脱水の補正が最優先)、少量持続のインスリン、カリウムの補正、誘因の治療。⑥血糖を急激に下げると脳浮腫を招く。⑦受診の中断の背景(自覚症状のなさ、費用、通院の負担、生活の変化)を聞き取る。
1分チェック
- 血糖904・浸透圧394・ケトン体陰性・pH7.32は。→ 高浸透圧高血糖状態。
この問題に対応する教材の確認中です。