高齢者の歩行時につまずきが見られる場合、筋力低下が考えられる筋肉はどれ か。
公式正答:2
解説
高齢者の歩行時につまずきがみられる場合に筋力低下が考えられる筋肉を問う。前脛骨筋である。
この問題で問われていること
歩行の各相で、どの筋が何をしているかを説明できるか。
しくみから理解する
前脛骨筋は、脛骨の外側面から起こり、足の内側楔状骨と第1中足骨に停止し、足関節を背屈させる。歩行では、遊脚期(足が地面から離れて前へ振り出される時期)に足首を背屈させ、つま先を持ち上げて地面との間に余裕をつくる。この働きが弱まると、つま先が下がって地面に引っかかり、つまずきの原因になる。また踵接地の直後には、足底が急に落ちないよう遠心性に働いて衝撃を和らげている。支配神経は深腓骨神経(総腓骨神経の枝)で、この神経が麻痺すると下垂足となり、つま先が上がらない特徴的な歩行(鶏歩)になる。
選択肢ごとの確認
大殿筋は、股関節を伸展させ、立位の保持と、立ち上がりや階段昇りに働く。筋力が低下すると、立ち上がりが困難になり、歩行時に体幹が後方へ傾く。つまずきの直接の原因にはならない。
下腿三頭筋(腓腹筋とヒラメ筋)は、足関節を底屈させ、歩行の立脚後期に体を前方へ推進する(蹴り出す)力を生む。筋力が低下すると、歩幅が狭くなり、推進力が落ちる。つま先を持ち上げる働きとは逆方向になる。
大腿四頭筋は、膝関節を伸展させ、立位の保持、立ち上がり、階段の昇降、着地時の衝撃の吸収に働く。筋力が低下すると、膝折れ、立ち上がりの困難、階段の困難が生じる。転倒の重要な要因ではあるが、つまずきという現象を直接説明するのは前脛骨筋になる。
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混同しやすいポイント
『つまずく=つま先が上がらない=背屈の筋』という結びつきが要点になる。歩行を分解して、どの相でどの筋が働くかを考える。前脛骨筋=遊脚期につま先を持ち上げる、下腿三頭筋=立脚後期に蹴り出す、大腿四頭筋=膝を支える、大殿筋=股関節を伸ばす。誤肢はいずれも歩行に重要な筋だが、つまずきの機序とは対応しない。
理解を深める
高齢者の転倒は、多くの要因が重なって起こる。身体の要因として、筋力の低下(とくに下肢と体幹)、バランス能力の低下、視力の低下、感覚の鈍化、めまい、起立性低血圧、関節の可動域の制限。環境の要因として、段差、敷物、コード類、照明の不足、滑りやすい床、手すりの欠如。行動と物の要因として、履物(スリッパ、サイズの合わない靴)、荷物、急ぐこと、夜間のトイレ。薬剤の要因として、睡眠薬、抗不安薬、降圧薬、利尿薬、抗精神病薬と、多剤併用。予防としては、筋力とバランスの訓練(片脚立ち、スクワット、つま先上げ)、環境の整備、履物の選択、薬剤の見直し、そして転倒への恐怖から活動を控えないよう支えることが挙げられる。前脛骨筋の訓練としては、椅子に座ってつま先を持ち上げる運動が簡単で続けやすい。歩行の観察では、つま先の上がり方、歩幅、左右差、体幹の動揺、方向転換の様子を見ると、どこに問題があるかが見えてくる。
間違えやすい考え方
筋の作用を問う型で、誤肢がすべて歩行に関わる筋である。つまずきの機序(背屈)で切る。
5分で振り返る
①前脛骨筋は足関節を背屈させ、遊脚期につま先を持ち上げる。②弱まるとつま先が引っかかりつまずく。③支配は深腓骨神経、麻痺すると下垂足と鶏歩になる。④下腿三頭筋は底屈で蹴り出し、大腿四頭筋は膝の伸展、大殿筋は股関節の伸展。⑤転倒は身体・環境・行動・薬剤の要因が重なる。⑥前脛骨筋の訓練は椅子に座ってのつま先上げ。⑦歩行の観察でつま先の上がり方と歩幅、左右差を見る。
1分チェック
- つまずきで筋力低下を疑う筋は。→ 前脛骨筋(足関節を背屈させ、つま先を持ち上げる)。
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