次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(28歳、会社員)は、夫(30歳、会社員)と2人で暮らしている。2023年2月5日からの月経を最後に無月経となり、妊娠の可能性を考えて受診した。医師の診察の結果、妊娠と診断された。
妊娠30 週2日。A さんは妊婦健康診査を受け、妊娠経過に異常はなく児の発育 も順調と診断された。診察後、A さんから看護師に「最近、腰が痛くなることがあ ります。腰痛への対処法はありますか」と質問があった。 看護師のA さんへの説明内容で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
妊娠30週2日で経過に異常のない妊婦から、腰痛への対処法を尋ねられた場面での説明を問う。シムス位で休むことである。
この問題で問われていること
腰痛の機序から、負担を減らす体位と方法を導けるか。
しくみから理解する
妊娠中の腰痛は、増大した子宮によって重心が前方へ移動し、これを支えるために腰椎の前弯が強まること、そしてリラキシンというホルモンによって靱帯と関節が緩むことによって生じる。シムス位は、半腹臥位で上側の膝を曲げて前方に置く体位で、腹部の重みを支持面に預けられるため、腰背部の筋と腰椎への負担が軽くなる。また左を下にすれば、増大した子宮による下大静脈の圧迫も避けられ、静脈還流が保たれる。妊娠後期の休息の体位として適する。
選択肢ごとの確認
安静にすることは、腰痛を悪化させる方向になる。動かないでいると、腰背部と腹部の筋力が低下し、姿勢を支える力が弱まってかえって痛みが増す。経過が順調であれば、適度な活動と、腰痛体操(骨盤の傾きを整える運動、腹筋と背筋の緩やかな強化)が推奨される。
椅子に浅く座ると、骨盤が後傾して背中が丸まり、腰椎への負担が増す。深く腰かけて背もたれを使い、必要に応じて腰にクッションを当てて前弯を支えるのがよい。足底が床につく高さにすることも重要になる。
柔らかいマットレスや布団は、体が沈み込んで脊柱のアライメントが崩れ、腰痛を悪化させる。適度な硬さのものを選び、体が沈み込まないようにする。横向きで寝る場合は、膝の間にクッションを挟むと骨盤のねじれが減って楽になる。
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混同しやすいポイント
誤肢はいずれも、腰椎への負担を増やす方向になっている。安静(筋力の低下)、浅く座る(後傾)、柔らかい寝具(沈み込み)。腰痛への対応の原則は、①姿勢を整える、②負担のかかる動作を避ける、③適度に動いて筋力を保つ、④休息時に負担の少ない体位をとる、になる。この4点から、それぞれの選択肢を判断できる。
理解を深める
妊娠中の腰痛への具体的な対策を挙げる。姿勢=立つときは背筋を伸ばし、片足を少し高い台に乗せると腰椎への負担が減る。座るときは深く腰かけて背もたれとクッションを使う。動作=物を持ち上げるときは膝を曲げて腰を落とす、前かがみを避ける、体をひねらない、重い物を持たない。履物=ヒールの高い靴を避け、安定した底の靴を選ぶ。用具=妊婦帯や骨盤ベルトで腹部を支える(締めすぎない)。運動=ウォーキング、マタニティスイミング、ヨガ、骨盤を動かす体操。休息=シムス位、膝の間のクッション、温罨法。これらを組み合わせる。なお、腰痛が突然強くなった、下肢のしびれや脱力を伴う、発熱がある、規則的な子宮収縮を伴うといった場合は、切迫早産、尿路感染、椎間板ヘルニアといった別の原因を考えて受診を勧める。マイナートラブルとして扱う前に、異常を除外する視点が必要になる。
間違えやすい考え方
『適切な説明』を問う型で、誤肢がすべて腰椎への負担を増やす方向である。姿勢と負担という観点で切る。
5分で振り返る
①妊娠中の腰痛は、重心の前方移動による腰椎前弯の増強と、リラキシンによる靱帯の弛緩による。②シムス位は腹部の重みを支持面に預けられ、左を下にすれば下大静脈の圧迫も避けられる。③安静は筋力を低下させ悪化させる。④椅子は深く腰かけて背もたれとクッションを使う。⑤寝具は適度な硬さ(柔らかすぎると沈み込む)。⑥動作は膝を曲げて持ち上げ、前かがみとひねりを避ける。⑦突然の悪化、下肢のしびれ、発熱、規則的な子宮収縮があれば別の原因を疑う。
1分チェック
- 妊娠中の腰痛への対処は。→ シムス位で休む(腹部の重みを預け、下大静脈の圧迫も避ける)。
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