A さん(27 歳、男性)は、突然の胸痛と呼吸困難があり、救急外来を受診した。 意識は清明。身長179 cm、体重63 kg、胸郭は扁平である。20 歳から1日50 本の 喫煙をしている。バイタルサインは、体温36.1 ℃、呼吸数22/分、経皮的動脈血 酸素飽和度(SpO2)96 %(room air)である。 胸部CT(別冊No. 2)を示す。 A さんの所見から考えられるのはどれか。
公式正答:3
解説
27歳男性、突然の胸痛と呼吸困難、やせ型で扁平胸郭、長期の喫煙歴という状況でのアセスメントを問う。右肺野の呼吸音は減弱している、である。
この問題で問われていること
事例の特徴から疾患を推定し、そこから導かれる身体所見を予測できるか。
しくみから理解する
若年でやせ型、胸郭が扁平、喫煙歴があるという条件は、原発性自然気胸の典型的な背景である。肺尖部にできた気腫性嚢胞(ブラ)が破れて空気が胸腔内へ漏れ、肺が虚脱する。虚脱した側では肺胞に空気が出入りしなくなるため、聴診で呼吸音が減弱または消失する。打診では鼓音(過共鳴音)となり、患側の胸郭運動も低下する。設問文と別冊の画像から患側が右と判断される状況で、右肺野の呼吸音減弱が正しい所見となる。
選択肢ごとの確認
SpO2が保たれ意識が清明であれば、直ちに酸素吸入を要するとは限らない。軽度の気胸では経過観察となることもある。ただし高濃度酸素投与は胸腔内の空気の吸収を促すため治療として用いられる場合もあり、判断は重症度による。設問文の所見からは必要と断定できない。
体温36.1℃と発熱がなく、感染を示す所見がない。気胸は感染症ではないため抗菌薬の適応にならない。
2か所が誤っている。気胸で胸腔内に貯留するのは空気であって液体ではない。液体が貯留するのは胸水(胸膜炎、心不全、悪性腫瘍)である。また患側は右である。
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混同しやすいポイント
気胸と胸水は、どちらも胸腔に何かが溜まる病態だが、溜まるものが違うため所見も異なる。気胸=空気=打診で鼓音、胸水=液体=打診で濁音。呼吸音の減弱は両方に共通するため、打診音が鑑別点になる。また画像では、気胸は肺の外側に透過性の高い(黒い)領域と虚脱した肺の縁が見え、胸水は下方に均一な陰影が見える。
理解を深める
最も警戒すべきは緊張性気胸である。破れた部位が一方向弁のように働き、吸気時に入った空気が呼気時に出られず、胸腔内圧が上昇し続ける。縦隔が健側へ偏位し、静脈還流が妨げられて心拍出量が低下し、閉塞性ショックに至る。徴候は、著明な呼吸困難、頻脈、血圧低下、頸静脈怒張、気管の健側偏位、患側の呼吸音消失である。これは緊急で、画像を待たずに胸腔穿刺による脱気を行う。通常の気胸の治療は、軽症では安静と経過観察、中等症以上では胸腔ドレナージを行う。看護では、ドレーンの管理(水封部の呼吸性変動、エアリーク、クランプしない)、疼痛管理、再発予防の指導(禁煙、気圧の変化を伴う行動の制限)を行う。
間違えやすい考え方
事例から所見を予測する型で、誤肢が治療の要否、感染の有無、貯留物と患側の取り違えで構成されている。疾患を推定してから所見を導く。
5分で振り返る
①若年・やせ型・扁平胸郭・喫煙は原発性自然気胸の背景。②肺尖部のブラが破れて肺が虚脱。③患側の呼吸音減弱、打診は鼓音。④胸水は液体で打診は濁音。⑤緊張性気胸は縦隔偏位・頸静脈怒張・血圧低下、直ちに脱気。⑥再発予防に禁煙。
1分チェック
- 自然気胸で聴診上どうなるか。→ 患側の呼吸音が減弱・消失する(打診は鼓音)。
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