次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(30歳、初産婦)は妊娠39週3日で陣痛発来した。その後、陣痛が増強して順調な分娩進行と診断され、入院後に分娩した。Aさんの分娩経過を以下に示す。2時00分陣痛周期10分5時30分入院15時00分分娩室入室15時30分子宮口全開大15時40分自然破水16時20分児娩出16時30分胎盤娩出18時30分帰室
児は出生2時間後、寝衣を着用しコットに収容された。児のバイタルサインは、 体温(腋窩温)36.4 ℃、呼吸数40/分、心拍数120/分であった。また末梢の冷感は あるが、チアノーゼは認めなかった。排尿、排便はない。児の頰を軽く突くと刺激 の方向を向き、口を開ける動作がみられる。また、腋窩と鼠径部に胎脂が付着して いる。 このときに必要なケアはどれか。
公式正答:1
解説
出生2時間後、体温36.4℃、呼吸数40/分、心拍数120/分、末梢冷感あり、チアノーゼなし、排尿排便なし、探索反射あり、腋窩と鼠径部に胎脂が付着している新生児に必要なケアを問う。掛け物を温めたものに交換することである。
この問題で問われていること
新生児の体温維持の重要性と、体温を奪う経路を理解しているか。
しくみから理解する
体温36.4℃は新生児の基準(36.5〜37.5℃)をわずかに下回り、末梢冷感もあることから、体温が低下しつつある状態と判断できる。新生児は、体重に対する体表面積が大きく、皮下脂肪が薄く、体温調節機能が未熟なため、容易に低体温に陥る。低体温は、酸素消費量の増加、低血糖、代謝性アシドーシス、呼吸障害を招き、悪循環となる。したがって保温が最優先のケアになる。掛け物を温めたものに交換することは、伝導と対流による熱の喪失を減らし、直ちに実施できる方法である。
選択肢ごとの確認
口腔内吸引の必要はない。呼吸数40/分は基準内、チアノーゼもなく、分泌物による気道の閉塞を示す所見がない。不必要な吸引は、粘膜の損傷、迷走神経反射による徐脈、低酸素を招くため行わない。
肛門刺激の必要はない。初回の排便(胎便)は生後24時間以内、初回の排尿も24時間以内にみられるのが通常であり、出生2時間で排泄がないことは正常な範囲になる。24時間を過ぎても排便がなければ、鎖肛やヒルシュスプルング病などを考えて評価する。
沐浴は行わない。胎脂は、皮膚を保護し、水分の喪失を防ぎ、抗菌作用も持つとされ、無理に洗い落とす必要はない。また体温が低下しつつある状態での沐浴は、さらに熱を奪う。近年は、出生後の沐浴を遅らせる(あるいは行わない)方針が広がっている。
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混同しやすいポイント
誤肢はいずれも「所見がないのに行う不要な処置」であり、しかも実施すれば害になるものである。設問文の所見を一つずつ確認すれば、呼吸は正常、排泄がないのも正常、胎脂は洗い落とす必要がないと判断できる。唯一、基準を外れているのが体温であり、そこに対応する。
理解を深める
新生児の熱の喪失には4つの経路がある。輻射(周囲の冷たい壁や窓へ熱が逃げる)、伝導(冷たい台や寝具に接して熱が奪われる)、対流(冷たい空気の流れにさらされる)、蒸散(皮膚が濡れていて気化熱を奪われる)。対策はそれぞれに対応する。分娩室と病室を暖める、窓際を避ける、寝具と衣類を温めておく、体を素早く拭いて乾かす、帽子をかぶせる(頭部からの喪失が大きい)、エアコンや扉の風が直接当たらないようにする、早期の母子接触(カンガルーケア)で母親の体温を利用する、といった方法になる。中性温度環境(新生児が最小の酸素消費で体温を保てる環境温度)を保つことが目標になる。出生直後は、呼吸と循環が胎内から胎外の様式へ切り替わる時期であり、体温、呼吸、循環、血糖の安定を確認することが観察の中心になる。低血糖のリスクが高い児(低出生体重児、巨大児、糖尿病母体児)では、血糖の測定と早期の授乳を行う。
間違えやすい考え方
『必要なケア』を問う型で、誤肢がすべて所見のない不要な処置である。基準を外れている所見を見つけて切る。
5分で振り返る
①新生児の体温基準は36.5〜37.5℃。36.4℃と末梢冷感は低体温の始まり。②低体温は酸素消費増加・低血糖・アシドーシス・呼吸障害を招く。③熱の喪失は輻射・伝導・対流・蒸散の4経路。④対策は室温、温めた寝具、素早く拭く、帽子、風を避ける、母子接触。⑤呼吸数40/分は正常、不要な吸引は徐脈と低酸素を招く。⑥初回排尿・排便は24時間以内が通常。⑦胎脂は皮膚を保護するので洗い落とさない。
1分チェック
- 体温36.4℃で末梢冷感のある新生児に何をするか。→ 保温(温めた掛け物に交換する)。
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