次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(30歳、初産婦)は妊娠39週3日で陣痛発来した。その後、陣痛が増強して順調な分娩進行と診断され、入院後に分娩した。Aさんの分娩経過を以下に示す。2時00分陣痛周期10分5時30分入院15時00分分娩室入室15時30分子宮口全開大15時40分自然破水16時20分児娩出16時30分胎盤娩出18時30分帰室
分娩直後の出血量は300 mL であった。分娩後1時間の出血量20 mL、子宮底は 臍下2横指で硬度良好、脈拍75/分、血圧100/74 mmHg であった。分娩後2時間 の出血は20 mL、子宮底は臍下1 横指で硬度良好。脈拍75/分、血圧126/56 mmHg であった。児への早期授乳後に下腹部の痛みを訴えている。尿意があり少 量の排尿があった。 A さんのアセスメントで適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
分娩直後の出血300mL、1時間後20mL・子宮底臍下2横指・硬度良好、2時間後20mL・子宮底臍下1横指・硬度良好、早期授乳後に下腹部痛があり、尿意があり少量の排尿があった褥婦のアセスメントを問う。子宮復古が良好であることである。
この問題で問われていること
複数の所見を、正常な経過の基準に照らして総合的に判定できるか。
しくみから理解する
子宮復古が良好であることを示す所見が揃っている。子宮底は分娩直後に臍下2〜3横指まで下がり、その後12時間ほどかけて臍高付近まで上昇し、以後1日1横指ずつ下降する。この事例では臍下2横指から臍下1横指へと推移しており、想定される経過に沿っている。硬度が良好であることは、子宮筋が十分に収縮して止血できていることを示す。出血量も1時間あたり20mLと少ない。早期授乳後の下腹部痛は、オキシトシンによる子宮収縮(後陣痛)であり、復古が進んでいる証になる。
選択肢ごとの確認
尿閉を疑う所見はない。ただし分娩後の尿閉には、まったく排尿できない型のほかに、排尿はできるが出しきれず残尿が多い型があり、後者は少量の排尿を繰り返す形で現れる。したがって「排尿がある」ことだけでは除外できず、疑うときは残尿量を測る。この事例では、出血量も子宮復古も所見に問題がなく、尿閉を積極的に疑う根拠がない。分娩後は、児頭による圧迫と会陰の疼痛、麻酔の影響により排尿しにくくなることがあるが、この事例は排尿できている。なお膀胱が充満すると子宮の収縮を妨げるため、分娩後は早期の排尿を促し、4〜6時間以内に自然排尿がなければ導尿を検討する。
下腹部痛は異常ではない。授乳による吸啜刺激でオキシトシンが分泌され、子宮が収縮することによる後陣痛である。生理的な現象であり、むしろ子宮復古が進んでいることを示す。
分娩時異常出血ではない。分娩時の異常出血は、経腟分娩で500mL以上を目安とする。この事例は分娩直後300mL、その後1時間ごとに20mLずつで、合計340mLであり基準を下回る。
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混同しやすいポイント
4つの選択肢が、それぞれ別の所見の判定になっている。子宮底と硬度(復古)、排尿(尿閉)、下腹部痛(後陣痛)、出血量(異常出血)である。それぞれの基準を持って一つずつ判定し、正常か異常かを見分ける。設問文に必要な数値がすべて示されているので、基準と照らす作業になる。
理解を深める
分娩後2時間は、弛緩出血が最も起こりやすい時期であり、分娩第4期と呼んで重点的に観察する。観察項目は、子宮底の高さと硬度、出血量と性状、バイタルサイン、疼痛、悪露、排尿、全身状態である。子宮の硬度が不良で出血が多い場合は、子宮底の輪状マッサージを行い、膀胱を空にし、必要に応じて子宮収縮薬を用いる。弛緩出血の要因には、多胎、羊水過多、巨大児による子宮の過伸展、遷延分娩や急速分娩による子宮筋の疲労、胎盤や卵膜の遺残、膀胱の充満がある。出血量の評価では、目に見える出血だけでなく、腟内や子宮内に貯留していることもあるため、バイタルサインの変化(頻脈、血圧低下)と全身状態を併せて見る。産科危機的出血への対応は、出血量とショック指数(心拍数÷収縮期血圧)を指標に、輸液・輸血・原因検索を進める体制が整えられている。早期授乳は、子宮収縮の促進、母子の愛着形成、母乳分泌の確立に有益であり、この事例のように分娩後早期に行われる。
間違えやすい考え方
複数の所見の判定を問う型で、誤肢がそれぞれ別の指標である。基準と照らして一つずつ判定する。
5分で振り返る
①子宮底は分娩直後に臍下2〜3横指、12時間後に臍高付近、以後1日1横指ずつ下降。②硬度良好は子宮筋の収縮と止血を示す。③授乳後の下腹部痛は後陣痛で生理的。④分娩時異常出血は経腟分娩で500mL以上。⑤分娩後の尿閉には、まったく排尿できない型と、排尿はあるが出しきれず残尿が多い型がある。「排尿がある」だけでは除外できず、疑うときは残尿量を測る。4〜6時間以内に自然排尿がなければ導尿を検討する。⑥膀胱の充満は子宮収縮を妨げる。⑦分娩後2時間は弛緩出血が最も起こりやすい。
1分チェック
- 分娩後2時間で子宮底臍下1横指・硬度良好・少量の出血は。→ 子宮復古が良好。
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