次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(21歳、女性、大学生)は、1人で暮らしている。友人関係のトラブルでうつ状態になり、3か月前から精神科クリニックへの通院を開始した。頓用の抗不安薬を処方され不安が高まったときに服用していたが、徐々に酩酊や陶酔感を得るために服用するようになった。最近は指示された抗不安薬の量では酩酊や陶酔感が得られなくなってきたため、数日分の薬を溜めて一度に大量に服用するようになった。抗不安薬を大量に使用した翌日は大学を休むことが続いていた。
ある日の夜、A さんと突然連絡がつかなくなったことを心配した母親が、A さ んのアパートを訪ねると、意識を失っているA さんを発見した。すぐに救急車を 呼び、A さんは救命救急センターへ搬送された。翌朝、同じ病院の精神科病棟に 転棟し、器質的検査および生理的検査では異常が認められなかった。救急隊からの 情報によると、アパートには抗不安薬を大量に服用した痕跡があった。 入院後48 時間から72 時間にかけてA さんに出現する可能性が高い症状はどれ か。
公式正答:1
解説
抗不安薬を大量服用して搬送され、精神科病棟に転棟した患者に、入院後48時間から72時間にかけて出現する可能性が高い症状を問う。幻覚である。
この問題で問われていること
離脱症状の内容と出現時期を把握しているか。
しくみから理解する
ベンゾジアゼピン系薬を継続的に大量に使用していた状態から、急に中断すると離脱症状が生じる。この薬は、中枢神経の抑制系であるGABAの作用を強めて働くため、長期使用により身体が適応し、薬がない状態では抑制が不足して中枢神経が過剰に興奮する。離脱症状としては、不安、不眠、振戦、発汗、頻脈、血圧上昇、知覚過敏が現れ、重症例では幻覚(とくに幻視)、けいれん、せん妄をきたす。半減期の長い薬剤では、中断から数日後に症状のピークを迎えることが多く、48〜72時間という時期は幻覚が出現しうる時期にあたる。
選択肢ごとの確認
感情鈍麻は、感情の表出と体験が乏しくなる状態で、統合失調症の陰性症状として現れる。離脱症状ではない。
思考途絶は、思考の流れが突然中断され、話が途切れる現象で、これも統合失調症でみられる。離脱症状ではない。
妄想気分は、周囲の世界が何か変わってしまい不気味だという、了解不能な不安と緊迫感を伴う体験で、統合失調症の初期にみられる。離脱症状ではない。
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混同しやすいポイント
誤肢3つがすべて統合失調症の症状で構成されている。設問が問うているのは、薬剤の中断によって生じる離脱症状であり、疾患の症状ではない。中枢神経抑制薬の離脱では、抑制が外れて過剰興奮の方向の症状(不安、振戦、けいれん、幻覚、せん妄)が出る、と機序から導ける。アルコールの離脱症状(振戦せん妄)と同じ方向である。
理解を深める
離脱症状への対応は、まず安全の確保になる。けいれんとせん妄は生命に関わりうるため、バイタルサインの観察、転倒と外傷の予防、脱水と電解質の補正、静かで見当識の手がかりのある環境の調整を行う。薬物療法としては、半減期の長いベンゾジアゼピン系薬に置き換えて漸減する方法がとられる。急な中断ではなく、計画的な減量が原則になる。この事例では、器質的検査と生理的検査で異常が認められておらず、意識障害は薬物によるものと考えられる。入院後は、離脱症状の観察と並行して、なぜ大量服用に至ったかを理解する関わりが始まる。自傷の意図があったかどうかの評価も重要で、再企図のリスクを見極める。依存の治療は、物質を止めることだけを目標にせず、その人が抱える困難への対処の方法を増やし、支えとなる関係を築くことに重点が置かれる。断酒会や薬物依存の自助グループ、精神保健福祉センター、依存症専門医療機関が資源になる。
間違えやすい考え方
離脱症状を問う型で、誤肢がすべて統合失調症の症状である。抑制系の薬の中断=過剰興奮という方向で切る。
5分で振り返る
①ベンゾジアゼピン系はGABAの作用を強める抑制系の薬。②中断すると抑制が外れて中枢神経が過剰興奮する。③離脱症状=不安、不眠、振戦、発汗、頻脈、知覚過敏、重症で幻覚・けいれん・せん妄。④半減期の長い薬では数日後にピーク。⑤感情鈍麻・思考途絶・妄想気分は統合失調症の症状。⑥対応は安全確保と計画的な漸減(急な中断をしない)。⑦自傷の意図と再企図のリスクを評価する。
1分チェック
- ベンゾジアゼピン系薬の離脱で48〜72時間に出るのは。→ 幻覚(ほかに振戦、発汗、けいれん、せん妄)。
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