次の文を読み、問いに答えよ。午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大腿部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。
発災3日後、B さん(72 歳、男性)が救護所を訪れた。地震で自宅が半壊したた め、妻と避難所で生活している。B さんは、左胸部から左腋窩にかけてピリピリと した持続する痛みを訴えた。看護師が観察すると、痛みの部位に沿って水疱を伴う 浮腫性紅斑が確認できた。体温36.5 ℃、呼吸数12/分、脈拍66/分、血圧126/80 mmHg。 看護師がB さんに行う観察で優先度が高いのはどれか。
公式正答:4
解説
発災3日後、左胸部から左腋窩にかけてピリピリとした持続する痛みがあり、痛みの部位に沿って水疱を伴う浮腫性紅斑がある72歳男性への観察で優先度が高いものを問う。全身性の浮腫性紅斑か視診することである。
この問題で問われていること
限局した皮疹と全身に広がる皮疹の違いが、何を意味するかを理解しているか。
しくみから理解する
症状から帯状疱疹が強く疑われる。水痘・帯状疱疹ウイルスが、初感染(水痘)の後に脊髄後根神経節などに潜伏し、加齢、疲労、ストレス、免疫の低下によって再活性化して発症する。通常は片側の一つの神経の走行に沿って(皮膚分節に一致して)皮疹が現れる。ここで確認すべきは、皮疹が全身に散在していないかである。皮疹が神経の支配領域を越えて全身に広がっている場合は、播種性帯状疱疹といい、免疫が著しく低下している可能性を示す。また播種性の場合は空気感染の対策が必要になり、避難所という集団生活の場では、水痘の免疫を持たない人(子ども、未罹患の成人、妊婦、免疫不全者)への感染の危険が生じる。したがって、限局しているか全身性かの視診が、本人の重症度と集団への対応の両方を決める。
選択肢ごとの確認
痛みの持続時間の問診は、症状の評価として必要だが、緊急性と対応の分岐を決める情報ではない。帯状疱疹では、皮疹の出現前から痛みが始まることが多く、皮疹が治った後も痛みが残る帯状疱疹後神経痛が問題になる。
1週間の睡眠状況は、発症の背景(疲労、ストレス)を知るうえで参考になるが、優先度は下がる。避難所での睡眠不足は確かに免疫の低下に関わる。
痛みが限局しているかを触診で確かめることは、皮疹の視診で得られる情報と重なる。また水疱に触れることは、内容液に含まれるウイルスへの接触につながるため、避けるべき方法になる。視診で判断できることを触診で行う必要はない。
ステロイド薬の長期投与の有無は、免疫の低下の背景として重要な情報である。ただし、まず目の前の皮疹が限局しているか全身性かを確認することが、対応の分岐(隔離の要否、緊急性の判断)に直結する。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
選択肢3の触診が、方法として不適切である点に注意する。水疱の内容液にはウイルスが含まれるため、不用意に触れない。視診で判断できる。また、この設問は「優先度が高い」を問うており、他の選択肢も情報としては有用である。優先されるのは、対応が分岐する判断(隔離の要否と緊急性)に直結する情報になる。
理解を深める
帯状疱疹の治療は、抗ウイルス薬をできるだけ早期(皮疹出現から72時間以内が望ましい)に開始することで、皮疹の治癒を早め、急性期の痛みを軽くする。なお帯状疱疹後神経痛を予防する効果については、無作為化試験を統合した検討で経口アシクロビルによる発症率の有意な減少は示されておらず、他の薬剤についても十分な証拠はない。早期に投与する根拠は、急性期の利益と、重症化しやすい人への適応にある。痛みには鎮痛薬を用い、神経障害性疼痛にはプレガバリンなどが使われる。感染対策としては、限局性の帯状疱疹では水疱の接触感染に注意し、皮疹を覆い、手指衛生を徹底する。水痘に罹患したことのない人(またはワクチン未接種の人)が接触すると、水痘として発症しうる。播種性の場合は空気感染の対策が必要になる。避難所では、この区別が集団への対応を大きく変える。三叉神経第1枝領域に生じた場合は、角膜炎やぶどう膜炎を起こす眼部帯状疱疹となり眼科の受診を要する。顔面神経膝神経節では、耳介の水疱、顔面神経麻痺、めまい、難聴を伴うRamsay Hunt症候群となる。50歳以上では帯状疱疹ワクチンの接種が推奨されており、予防の選択肢として情報提供できる。
間違えやすい考え方
『優先度が高い観察』を問う型で、誤肢に不適切な方法(触診)が混ざっている。対応が分岐する判断で切る。
5分で振り返る
①帯状疱疹=水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化、通常は片側の皮膚分節に沿う。②全身に広がる播種性では免疫の著しい低下を示し、空気感染対策が必要。③避難所では未罹患者への感染の危険があるため、限局性か全身性かの判断が集団への対応を決める。④水疱にはウイルスが含まれるので触診しない。⑤抗ウイルス薬は皮疹出現から72時間以内に開始する。⑥限局性では接触感染対策と皮疹を覆う。⑦眼部は角膜炎、膝神経節はRamsay Hunt症候群。
1分チェック
- 帯状疱疹を疑ったらまず何を見るか。→ 皮疹が限局しているか全身性か(播種性なら空気感染対策と免疫低下を考える)。
この問題に対応する教材の確認中です。