次の文を読み、問いに答えよ。午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大腿部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。
発災翌日、避難所には150 名ほどの避難者が登録をしている。医療救護班の医師 から「この数日間で、インフルエンザ influenza の患者が病院で増えている。避難所でも注意 したほうがよい」と看護師に助言があった。看護師は避難所運営者と連携して、避 難所でのインフルエンザ influenza の集団発生防止策を立てることにした。午前9時現在、避 難者の中には発熱や咳をしている有症者はいない。 避難所での集団感染を防止する対策で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
発災翌日、150名が登録する避難所でインフルエンザの集団発生を防ぐ対策を問う。避難者に入所時からの体調を健康チェック表に記載してもらうことである。
この問題で問われていること
集団感染の防止において、早期発見の仕組みが果たす役割を理解しているか。
しくみから理解する
集団感染を防ぐ基本は、有症者を早期に発見し、他の避難者から離して対応することにある。現時点で有症者はいないが、潜伏期にある人がいる可能性はある。健康チェック表により、全員の体調を継続的に把握できれば、発熱や咳の出現を早期に捉え、直ちに専用スペースへの移動、マスクの着用、医療機関への受診につなげられる。また記録が残ることで、発症者の推移を把握し、対策の効果を評価できる。感染が広がってから対応するのではなく、広がる前に見つける仕組みを作ることが、集団感染の防止として最も効果を持つ。
選択肢ごとの確認
床をアルコールで清掃することは適切でない。インフルエンザの主な感染経路は飛沫と接触であり、床が主要な感染源ではない。広い面積へのアルコール使用は、引火の危険、蒸気の吸入、費用と資材の浪費を伴う。清掃するなら、手が触れる場所(ドアノブ、手すり、スイッチ、共用物)を対象にする。
共同のトイレにタオルを置くこと自体が感染の原因になる。共用のタオルは、手指を介した接触感染の温床になる。毎日交換するのではなく、共用タオルを置かず、ペーパータオルまたは各自のタオルを使用する。
換気を1日1回では不十分である。多数が密集して過ごす避難所では、こまめな換気(可能であれば常時、または1〜2時間ごとに数分)が必要になる。回数を明示した選択肢は、その回数が適切かどうかで判断する。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
誤肢は、対象の取り違え(床)、そもそも避けるべき運用(共用タオル)、頻度の不足(1日1回の換気)で構成されている。いずれも「何もしないよりまし」に見えるが、感染経路に対応していないか、効果が不十分である。集団感染の防止では、経路(飛沫、接触)に対応した対策と、早期発見の仕組みの両方が要る。
理解を深める
避難所の感染対策としては、次の要素を組み合わせる。手指衛生(手洗い設備が使えない場合はアルコール製剤)、咳エチケットとマスク、こまめな換気、居住スペースの区画(世帯ごとの間隔を空ける、可能なら段ボールベッドとパーティション)、共用物の管理(タオルを共用しない、食器の使い回しを避ける)、トイレの衛生、ごみの管理、食品の衛生、そして有症者の早期発見と分離のための健康チェックである。有症者が出た場合は、専用のスペースと動線を確保し、可能なら家族単位で移動する。ノロウイルスによる感染性胃腸炎も避難所で問題になり、吐物の処理方法(次亜塩素酸ナトリウム、使い捨て手袋とマスク、換気、乾燥させない)を共有しておく。避難所の運営者と協働して仕組みを作ることが重要で、看護師が一人で担うものではない。掲示、放送、リーダーを通じた周知、当番制など、避難者自身が参加する形にすると継続しやすい。
間違えやすい考え方
『適切な対策』を問う型で、誤肢が対象の取り違え・避けるべき運用・頻度の不足である。感染経路と早期発見で切る。
5分で振り返る
①集団感染の防止は、有症者の早期発見と分離が基本。②健康チェック表で全員の体調を継続的に把握する。③インフルエンザの経路は飛沫と接触、床は主要な感染源ではない。④清掃は手が触れる場所(ドアノブ、手すり、スイッチ)を対象にする。⑤共用タオルは置かない。⑥換気は1日1回では不十分、こまめに行う。⑦運営者と協働し、避難者自身が参加する形にする。
1分チェック
- 避難所で集団感染を防ぐ基本は。→ 健康チェックによる有症者の早期発見と分離。
この問題に対応する教材の確認中です。