次の文を読み、問いに答えよ。午後1時に震度6強の地震が発生し、避難所が開設された。地震発生の2時間後、避難所に救護所が設置され、近隣の病院から医療救護班が派遣された。医療救護班が複数の被災者に対応するなか、Aさん(54歳、男性)が搬送されてきた。Aさんは右大腿部に4cmの切創があり出血部位をタオルで押さえている。すぐに看護師が切創部の処置を介助することになった。
このときの看護師の感染予防対策で正しいのはどれか。
公式正答:1
解説
震災の救護所で、右大腿部に4cmの切創があり出血している被災者の処置を介助する看護師の感染予防対策を問う。ゴーグルを装着して処置の介助を行うことである。
この問題で問われていること
標準予防策の考え方を、血液曝露の危険という観点で適用できるか。
しくみから理解する
標準予防策では、すべての人の血液、体液、分泌物、排泄物、損傷した皮膚、粘膜を感染の可能性があるものとして扱う。血液が飛散する可能性のある処置では、手袋とガウンに加えて、眼・鼻・口の粘膜を守る個人防護具(ゴーグルまたはフェイスシールド、マスク)を着用する。この事例は出血を伴う切創の処置であり、洗浄や圧迫の際に血液が飛散しうる。眼の粘膜は血液由来の病原体の侵入経路になるため、ゴーグルの装着が適切な対策になる。災害時で物品が限られる状況であっても、この原則は変わらない。
選択肢ごとの確認
使い捨て手袋は、時間ではなく処置ごと、患者ごとに交換する。1時間ごとという基準では、同じ手袋で複数の患者に触れることになり、交差感染を招く。手袋を外した後は手指衛生を行う。
処置の前に看護師が破傷風ワクチンを受けるという対応は、この場面の感染予防策として成り立たない。ワクチンの効果が現れるまでに時間がかかり、その場の防御にならない。破傷風について注意が必要なのは被災者の側で、土壌に触れた創傷では破傷風のリスクがあり、創の洗浄と、必要に応じた破傷風トキソイドや抗破傷風ヒト免疫グロブリンの投与が検討される。医療者自身の予防接種は、平常時に済ませておくものである。
ガウンに患者名を書いて専用にするという運用は適切でない。ガウンは、汚染された時点で感染源となるため、処置ごとに脱いで廃棄する。名前を書いて再利用すれば、汚染したガウンを繰り返し着用することになり、かえって感染を広げる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、交換の基準の誤り、対象の取り違え、再利用という3つの誤りで構成されている。いずれも「災害時で物資が限られているから」という発想から生まれうる誤りだが、感染対策の原則は状況によって変えられない。むしろ災害時は、衛生環境が悪く、感染症が広がりやすいため、原則を守ることの重要性が増す。
理解を深める
災害現場では、水道と手洗い設備が使えないことが多く、擦式アルコール手指消毒薬の確保が重要になる。廃棄物の処理も課題で、血液の付着した物品と鋭利物を安全に分別・保管する仕組みを、限られた資材の中で作る必要がある。針刺し事故が起きた場合は、直ちに流水で洗い、報告し、被曝源の評価と必要な予防措置(B型肝炎、C型肝炎、HIV)を行う体制を、あらかじめ決めておく。破傷風は、土壌中の芽胞が創から侵入して発症し、開口障害、痙笑、後弓反張、呼吸筋の痙攣をきたす。致死率が高く、災害後の創傷では常に念頭に置く。日本では定期予防接種により若年層の抗体保有率は高いが、高齢者では低い。この事例のような創傷では、創の十分な洗浄とデブリードマン、そして予防接種歴の確認が重要になる。避難所全体としては、手洗いとうがい、咳エチケット、トイレの衛生、食品の管理、換気、有症者の把握と分離が、集団感染の予防策になる。
間違えやすい考え方
『正しい感染予防対策』を問う型で、誤肢が交換基準・対象・再利用の誤りである。標準予防策の原則で切る。
5分で振り返る
①標準予防策=すべての人の血液・体液を感染の可能性があるものとして扱う。②血液が飛散しうる処置ではゴーグルまたはフェイスシールドを着用する。③手袋は時間ではなく処置ごと・患者ごとに交換し、外した後に手指衛生。④ガウンは処置ごとに脱いで廃棄、再利用しない。⑤医療者の予防接種は平常時に済ませておく。⑥土壌に触れた創傷では破傷風のリスク、洗浄と予防接種歴の確認。⑦災害時こそ原則を守る。
1分チェック
- 血液が飛散しうる処置での防護は。→ 手袋とガウンに加えてゴーグル(眼の粘膜を守る)。
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