禁酒を指導されている患者が「禁酒できたらもっと健康的な生活になるね。自分 は我慢強いところがあるからやれると思う」と話し、3 週間禁酒を続けている。 患者の行動変容を促したのはどれか。
公式正答:2
解説
禁酒を続けている患者の発言から、行動変容を促した要因を問う。自己効力感である。
この問題で問われていること
行動科学の概念を、患者の具体的な発言から同定できるか。
しくみから理解する
自己効力感(self-efficacy)は、バンデューラが提唱した概念で、ある行動をうまく実行できるという自分自身への確信をいう。設問の患者は「自分は我慢強いところがあるからやれると思う」と述べており、これは自分の遂行能力に対する信念そのものである。自己効力感が高いほど行動を開始しやすく、困難に直面しても継続しやすい。自己効力感を高める4つの情報源は、遂行行動の達成(成功体験)、代理的経験(他者の成功を見る)、言語的説得(励まし)、生理的・情動的状態(体調や気分)であり、なかでも成功体験が最も強力とされる。3週間継続できている事実自体が、さらに自己効力感を高める好循環を生む。
選択肢ごとの確認
自分の内面や行動の動機を深く見つめ理解すること。発言は自分の性格特性への言及ではあるが、行動を起こす原動力として働いているのは『やれる』という確信であり、洞察そのものではない。
ピアジェの発達理論で、幼児期に他者の視点に立てない認知の特徴を指す用語。行動変容の促進要因ではない。
エリクソンの発達課題で、青年期に『自分は何者か』を確立すること(アイデンティティ)。行動変容の理論とは別の枠組みである。
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混同しやすいポイント
『自己』で始まる用語が4つ並んでおり、それぞれ別の理論に属する。バンデューラ=自己効力感、ピアジェ=自己中心性、エリクソン=自己同一性、と提唱者とセットで覚えると混乱しない。また自己効力感と結果期待(その行動をとれば良い結果が得られるという期待)は別概念で、「禁酒できたらもっと健康的になるね」の部分が結果期待、「自分はやれると思う」の部分が自己効力感にあたる。
理解を深める
行動変容の理解には、変化のステージモデル(プロチャスカ)も重要である。無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期の5段階に分け、段階に応じた働きかけを選ぶ。設問の患者は3週間継続しており実行期にあたる。実行期では、逆戻り(再発)を防ぐために、誘惑場面への対処法を一緒に考え、成功を認めて強化する関わりが有効である。生活習慣の改善指導では、知識を与えるだけでは行動は変わらず、小さな成功体験を積み重ねて自己効力感を高める設計が要る。
間違えやすい考え方
似た用語を並べる型。設問文の中の『やれると思う』という一語が概念の定義に直結しており、そこを拾えるかで決まる。
5分で振り返る
①自己効力感=行動を遂行できるという確信(バンデューラ)。②高める4情報源=成功体験・代理的経験・言語的説得・生理的状態。③自己中心性はピアジェ、自己同一性はエリクソン。④結果期待とは別概念。⑤変化のステージは無関心・関心・準備・実行・維持。
1分チェック
- 「自分はやれると思う」はどの概念か。→ 自己効力感。
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