次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(80歳、男性、要介護2)は1人で暮らしている。cerebralhemorrhage脳出血を発症し、急性期病院で地域連携クリニカルパスに沿って治療が行われた。軽度の右不全麻痺と失語があるため、回復期リハビリテーション病院に転院した。Aさんは自宅退院を希望している。退院後はかかりつけの診療所へ通院し、訪問看護と訪問介護を利用する予定である。
退院1 か月後、隣町に住んでいる長男がA さん宅を訪ねると、A さんは嘔吐と 下痢をしていた。長男が付き添ってかかりつけの診療所を受診したところ、A さ んは infectious gastroenteritis 感染性胃腸炎と診断された。A さんの長男から依頼を受け、訪問看護師はA さんの体調確認のために臨時で訪問した。 このときの訪問看護師の対応で正しいのはどれか。
公式正答:2
解説
感染性胃腸炎と診断された在宅療養者への訪問看護師の対応を問う。石鹸と流水で手洗いできているかを確認することである。
この問題で問われていること
在宅における感染対策を、病原体の特性を踏まえて具体化できるか。
しくみから理解する
感染性胃腸炎の多くはノロウイルスなどによるもので、感染経路は糞口感染(接触感染)である。手指を介して口へ運ばれることが伝播の主要な経路であるため、手洗いが最も基本的で効果の高い対策になる。とくにノロウイルスはエンベロープを持たないためアルコール消毒の効果が限定的であり、石鹸と流水による物理的な洗い流しが重要になる。訪問看護師は、本人が実際に手洗いできているか(手技、タイミング、洗面所の環境)を確認し、できていなければ具体的に支援する。軽度の右不全麻痺があることから、片手での手洗いの工夫も要る。
選択肢ごとの確認
感染性胃腸炎は感染症法上の五類感染症のうち定点把握対象であり、指定された定点医療機関が届け出るものである。個々の患者について訪問看護師が届け出る仕組みではない。集団発生の場合は医療機関や施設から保健所へ報告する。
感染対策を講じたうえでサービスは継続するのが原則である。中止すれば生活支援が途切れ、1人暮らしの療養者は食事や清潔の維持ができなくなる。訪問介護員への情報提供と、標準予防策に加えた接触感染予防策の徹底を図る。
汚染した衣類は、付着物を取り除いてから次亜塩素酸ナトリウムで消毒するか、85℃以上で1分以上の熱水洗濯を行う。乾燥した吐物からウイルスが舞い上がって空気を介して伝播することがあるため、室内での乾燥は勧められない。屋外でよく乾燥させる。
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混同しやすいポイント
ノロウイルスへのアルコールの効果が限定的である点が最大の要点である。エンベロープを持つウイルス(インフルエンザ、新型コロナウイルス)にはアルコールが有効だが、持たないウイルス(ノロ、ロタ)には効きにくい。消毒には次亜塩素酸ナトリウムを用いる。この違いを知らないと、手指消毒薬を勧めるという誤りにつながる。
理解を深める
吐物・便の処理では、使い捨ての手袋、マスク、エプロンを着用し、ペーパータオル等で外側から内側へ静かに拭き取り、次亜塩素酸ナトリウム(吐物処理では0.1%程度、環境の清拭では0.02%程度)で消毒する。使用したものはビニール袋に密閉して廃棄する。飛散を防ぐため、掃除機や乾いた布での拭き取りは行わない。在宅では、家族が処理することになるため、必要な物品(手袋、マスク、ペーパータオル、塩素系漂白剤、ビニール袋)を平時から準備しておく指導が有効である。脱水の評価(尿量、口渇、皮膚の緊張、意識状態)と経口補水液による水分補給も重要で、高齢者では脱水が急速に進むため受診の目安を伝えておく。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢が届出の主体の誤り、サービス中止という過剰な対応、消毒方法の誤りで構成されている。病原体の特性から具体的な対応を導く。
5分で振り返る
①感染経路は糞口(接触)感染、手洗いが最重要。②ノロウイルスはエンベロープがなくアルコールが効きにくい。③消毒は次亜塩素酸ナトリウム。④吐物処理は防護具着用、外から内へ拭き取り、飛散させない。⑤汚染衣類は消毒または熱水洗濯し屋外で乾燥。⑥サービスは対策を講じて継続する。
1分チェック
- 感染性胃腸炎の在宅対応でまず確認することは何か。→ 石鹸と流水による手洗いができているか。
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