次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(80歳、男性、要介護2)は1人で暮らしている。cerebralhemorrhage脳出血を発症し、急性期病院で地域連携クリニカルパスに沿って治療が行われた。軽度の右不全麻痺と失語があるため、回復期リハビリテーション病院に転院した。Aさんは自宅退院を希望している。退院後はかかりつけの診療所へ通院し、訪問看護と訪問介護を利用する予定である。
退院2 か月後、訪問看護師が訪問するとA さんの長男から「最近、父がよく話し てくれるようになったが、言いたいことが伝わらずイライラしていることがある。 どう対応していいかわからない」と相談があった。 A さんとのコミュニケーションについて、家族への助言で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
脳出血後に失語のあるAさんについて、家族から相談を受けた訪問看護師の助言を問う。短くわかりやすい言葉で話しかけるよう伝えることである。
この問題で問われていること
失語のある人との対話を成立させるための具体的な工夫を、家族に伝えられるか。
しくみから理解する
失語では、言葉の理解と表出の両方またはいずれかが障害される。長い文、複雑な構文、早口は理解を妨げるため、短く区切って、平易な言葉で、ゆっくり話しかけることが基本になる。また一度に多くの情報を伝えず、一文に一つの内容にする。話す側が工夫することで、本人の理解と応答が成立しやすくなり、『伝わらないイライラ』も減る。家族への助言としては、この具体的で実行しやすい方法が最も適切である。
選択肢ごとの確認
聞き返しを繰り返すと、本人は自分の言葉が伝わらないことを何度も突きつけられ、話す意欲を失う。聞き取れないときは、はい・いいえで答えられる形に変える、選択肢を示す、身振りや筆記を併用するなど、方法を変えて確かめる。
訂正の繰り返しは自尊心を傷つけ、発話をためらわせる。意味が通じていれば言い間違いはそのまま受け止め、会話を続けることを優先する。伝わったことを示す反応を返すほうが発話を促す。
逆である。失語では言葉での表現が制限されるため、表情、身振り、視線、声の調子といった非言語的な手がかりがより重要になる。言葉だけに頼ると意図を取り違える。
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混同しやすいポイント
失語のある人への関わりで最も大切なのは、『正しく話させること』ではなく『意思が通じること』である。誤肢1・2はいずれも正確さを求める方向であり、コミュニケーションの目的からずれている。設問の家族は『どう対応していいかわからない』と困っており、明日から実行できる具体的な方法を求めている点も読み取る。
理解を深める
失語のある人との対話では、環境を整えることも有効である。テレビを消して雑音を減らす、正面から視線を合わせる、時間に余裕を持つ、話題を明確にしてから話す(今から何の話をするかを示す)といった工夫が理解を助ける。実物、写真、絵カード、指差し、書字、コミュニケーションノートといった補助手段も使える。家族には、本人の理解力は保たれている場合が多く、子ども扱いや本人の前での病状の話は避けるべきことも伝える。言語聴覚士による訓練と並行して、日常のやりとりそのものが練習の場になる。失語症友の会などの当事者・家族の集まりも支えになる。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢が『正確さを求める』方向と『非言語を軽視する』方向で作られている。目的(意思疎通)を軸に選ぶ。
5分で振り返る
①短く区切り、平易な言葉で、一文に一つの内容。②聞き返しの繰り返しや言い間違いの訂正は避ける。③表情・身振り・視線など非言語の手がかりを大切にする。④雑音を減らし正面から話す。⑤絵カード・筆記・指差しを併用。⑥子ども扱いをしない。
1分チェック
- 失語のある人への話しかけ方は何か。→ 短くわかりやすい言葉でゆっくりと。
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