次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(56歳、男性、会社員)はthoracicesophagealcancer胸部食道癌と診断され、開胸開腹下で食道切除再建術を受けることになった。病状と手術の説明を聞き「酒もほとんど飲まないのに、esophagealcancer食道癌になっちゃうんですね」と落ち込んだ様子で「早くよくなりたい。20歳から毎日20本吸っていたタバコも手術が決まってやめました」と話した。身体所見:身長168cm、体重54kg、BMI19。血液所見:Hb13.6g/dL、Ht41.4%、血小板数28万/μL、プロトロンビン時間11秒、総蛋白6.2g/dL、アルブミン3.8g/dL、空腹時血糖102mg/dL、HbA1c4.8%。呼吸機能所見:%VC78%、FEV1%67%。
術前のA さんの状況から、術後に最も起こる可能性の高い合併症はどれか。
公式正答:2
解説
喫煙歴が長く呼吸機能検査で閉塞性障害を示す食道癌患者で、術後に最も起こる可能性の高い合併症を問う。無気肺である。
この問題で問われていること
術前のデータから、術後に生じやすい合併症を予測できるか。
しくみから理解する
この患者は20歳から毎日20本、30年以上の喫煙歴があり、%VC 78%(基準80%未満で拘束性障害)、FEV1% 67%(基準70%未満で閉塞性障害)と、換気機能が両方向に低下している。長期喫煙により気道の線毛運動が障害され、分泌物が増え、喀出しにくい状態にある。加えて開胸開腹手術では、胸壁と横隔膜の損傷、術後の創部痛により深い呼吸と咳嗽が妨げられる。その結果、気道分泌物が末梢に貯留して気管支を閉塞し、その先の肺胞が虚脱して無気肺となる。食道癌手術は侵襲が大きく、呼吸器合併症の頻度が高いことが知られている。
選択肢ごとの確認
血小板数28万/μL、プロトロンビン時間11秒といずれも基準範囲内で、凝固機能に問題はない。出血傾向を予測させるデータはない。
食道再建術では重要な合併症だが、この患者は総蛋白6.2g/dL、アルブミン3.8g/dLと栄養状態は保たれており、HbA1c 4.8%と血糖コントロールも良好である。縫合不全のリスクを高める低栄養や糖尿病の所見がない。
リスクではあるが、この患者に特に高いことを示すデータはない。BMI 19と肥満はなく、既往にも血栓症を示すものがない。設問は『最も起こる可能性が高い』を問うており、呼吸機能の低下という明確な所見がある無気肺が優先される。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
設問文に並べられた検査値は、どれかが答えを指し示すために置かれている。血液所見(凝固・栄養・血糖)はすべて正常で、異常なのは呼吸機能所見だけである。データを一つずつ基準値と照合し、外れているものを見つけるのが解き方になる。%VC 80%未満、FEV1% 70%未満という基準値を覚えていないと判断できない。
理解を深める
呼吸器合併症の予防は術前から始まる。禁煙は最も効果的で、少なくとも手術の4週間前からが望ましいとされる(この患者は手術が決まってから禁煙しており、期間としては十分でない可能性がある)。術前から呼吸訓練(深呼吸、インセンティブスパイロメトリー、口すぼめ呼吸、腹式呼吸、排痰法)を練習しておくと、術後に実行しやすい。術後は、十分な疼痛管理(痛みがあると深呼吸も咳もできない)、早期離床、体位ドレナージ、ネブライザー、必要に応じて吸引を行う。硬膜外麻酔による鎮痛は、呼吸抑制を避けつつ疼痛を抑えられるため有用である。無気肺は発熱と呼吸音の減弱、SpO2低下で気づかれることが多い。
間違えやすい考え方
『最も起こる可能性が高い』を問う型で、4肢すべてが術後合併症として実在する。設問文の数値のうちどれが異常かを見つけられるかで決まる。
5分で振り返る
①%VC 80%未満=拘束性障害、FEV1% 70%未満=閉塞性障害。②長期喫煙で線毛運動が障害され分泌物が増える。③開胸開腹+創部痛で深呼吸と咳嗽が妨げられる→無気肺。④予防は術前禁煙と呼吸訓練、術後は疼痛管理と早期離床。⑤縫合不全は低栄養・糖尿病がリスク。
1分チェック
- 喫煙歴が長く換気機能が低下した患者の術後合併症は何か。→ 無気肺(呼吸器合併症)。
この問題に対応する教材の確認中です。