次の文を読み、問いに答えよ。大型の台風が直撃するという予報を受けて、午前9時、病院では災害対策本部が立ち上がった。また、病院の所在する市から避難所への看護師派遣の要請を受け、対応することになった。
土砂災害の発生によって家屋の復旧が遅れており、今後さらに避難生活が必要に なることが避難者に説明された。避難所を開設してから5 日が経過しており、避難 者の間で、家に戻れない不安と慣れない避難生活のストレスから、配食や洗濯場の 順番を理由に口論が起こっていた。その日の午後、D さん(72 歳、男性)が「何度 言ったらわかるんだ」と大声を出していた。避難所の看護師が近づくと、D さんの 表情がこわばっており苛立っているのが分かった。 このときの看護師のD さんへの対応で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
避難生活5日目、口論の中で大声を出し苛立っている避難者への対応を問う。複数人で静かな環境に案内することである。
この問題で問われていること
興奮している人への安全な対応の原則を理解しているか。
しくみから理解する
興奮している人への対応では、刺激を減らすことと、対応者の安全を確保することが基本になる。人が多く音の多い場所では興奮が持続・増強しやすいため、静かな場所へ移動してもらう。移動と対話は複数人で行う。これは、一人では対応が行き詰まったときに交代できること、不測の事態に備えられること、そして本人にも周囲にも公正であることを示せることによる。ただし取り囲んで威圧しないよう、距離を保ち、出口を塞がない位置に立つ。落ち着ける場所で話を聴けば、苛立ちの背景(家に戻れない不安、疲労、睡眠不足、プライバシーのなさ)に触れることができる。
選択肢ごとの確認
大声は威圧となり、興奮をさらに高める。対応者は、低くゆっくりした声で、短い言葉で話しかける。注意や指示ではなく、まず話を聴く姿勢を示す。
興奮している人に、見えない位置から触れることは危険である。驚いて反射的に攻撃する可能性があり、対応者が負傷しうる。接触は、正面から声をかけ、了解を得てから行う。
本人の訴えを退け、我慢を求める対応である。苛立ちの背景にある事情に触れず、比較によって黙らせようとすることは、さらなる反発を招く。また避難所全体のストレスという構造的な問題を、個人の忍耐に帰することにもなる。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
『落ち着かせよう』として声を大きくしたり触れたりすることが、いずれも逆効果かつ危険である点が要点である。原則は、刺激を減らす、複数人で対応する、正面から低い声で、距離を保つ、である。これは避難所に限らず、興奮している人への対応に共通する。
理解を深める
避難生活が長期化すると、プライバシーの欠如、睡眠不足、騒音、寒暖、食事の偏り、トイレの不便、先の見えない不安が重なり、避難者どうしの摩擦が増える。これは個人の問題ではなく環境の問題であるため、対応も環境の改善に向ける。間仕切りの設置、就寝時間帯の静穏の取り決め、配食や洗濯の順番のルール化と掲示、相談窓口の設置、要配慮者への別室の確保といった対策がある。避難所の運営には、避難者自身の参加(自治組織)が有効で、決定に関わることが無力感を減らす。看護師は、個々の健康管理と並行して、こうした環境と運営に働きかける役割を持つ。またこの時期には、感染症の発生、生活不活発病、慢性疾患の悪化、深部静脈血栓症も同時に問題になる。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢が威圧、危険な接触、我慢の強要で構成されている。安全確保という原則で選ぶ。
5分で振り返る
①刺激を減らし静かな場所へ移動する。②複数人で対応する(交代と安全確保)。③低くゆっくりした声で、正面から、距離を保つ。④背後からの接触は危険。⑤我慢を求めず背景の事情を聴く。⑥摩擦は環境の問題として捉え、間仕切り・ルール化・相談窓口で対応する。⑦避難者自身の参加が無力感を減らす。
1分チェック
- 興奮している人にどう対応するか。→ 複数人で静かな環境へ案内する。
この問題に対応する教材の確認中です。