次の文を読み、問いに答えよ。大型の台風が直撃するという予報を受けて、午前9時、病院では災害対策本部が立ち上がった。また、病院の所在する市から避難所への看護師派遣の要請を受け、対応することになった。
この台風による大雨の影響で、大規模な土砂災害が発生した。病院から派遣され て避難所内を巡回していた看護師は、元気がないC さん(66 歳、女性)のことが気 になり、毎日声をかけていた。発災3 日目、C さんは避難所内を巡回していた看護 師を呼び止めて話をした。C さんは、土砂災害があったときに娘と自宅にいたが、 C さんが先に屋外に避難したことを悔やんでいた。「娘の行方がまだ分からない。 静かになると、あのときのことを思い出して涙が止まらなくなる」と悲しんでいる。 このときの看護師のC さんへの対応で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
土砂災害で娘の行方が分からず、先に避難したことを悔やんで涙が止まらないと話す被災者への対応を問う。睡眠と食事の状況を聞くことである。
この問題で問われていること
強い悲嘆を訴える人に対し、まず何を確認すべきかを判断できるか。
しくみから理解する
強い悲嘆と罪責感の中にある人では、眠れない、食べられないという状態が続きやすい。睡眠と食事が保てなければ、心身の消耗が進み、判断力も低下し、体調を崩す。またこれらは、うつ状態や急性ストレス障害の重症度を測る具体的な指標にもなる。したがって、気持ちを受け止めたうえで、生活が保てているかを具体的に尋ねることが、次の支援(休息できる場所の確保、医療への橋渡し、食事の工夫)につながる。感情に触れながら、生活という具体的な事実を確認するという二重の意味を持つ対応である。
選択肢ごとの確認
喪失を否定する言葉であり、深い傷つきを与える。しかも娘は行方不明であり、生死が確定していない曖昧な喪失の状態にある。忘れることを促すのは、本人の願い(見つかってほしい)を打ち消すことにもなる。
根拠のない保証である。見つからなかった場合、その言葉は本人を深く裏切ることになる。確約できないことを伝えて安心させてはならない。
発災3日目で、悲嘆の只中にある人に活動を勧めることは、感情を扱う機会を奪い、負担になる。時期が早すぎる。回復の過程で活動が意味を持つ時期は来るが、いまではない。
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混同しやすいポイント
『何と言葉をかけるか』ではなく『何を確かめるか』が答えになっている点が、この設問の特徴である。悲嘆に対して気の利いた言葉は存在しない。むしろ、そばにいて、生活が保てているかを具体的に確かめ、必要な支援につなぐことが実際的な援助になる。
理解を深める
行方不明という状況は、曖昧な喪失(ambiguous loss)と呼ばれ、死が確定していないため喪の作業が進まず、悲嘆が長引きやすい。希望と絶望の間で揺れ、生活の再建に踏み出せない状態が続く。この患者には加えて、自分が先に避難したという罪責感(サバイバーズギルト)があり、自責が回復を妨げる。支援としては、繰り返し話を聴くこと、その反応が異常ではないと伝えること、生活の基盤(睡眠、食事、休息できる場所)を整えること、そして必要に応じてDPATや精神科医療につなぐことが挙げられる。強い不眠、食事がまったく摂れない、希死念慮、解離症状、日常生活が成り立たない場合は、専門的な支援を要する。同じ看護師が毎日声をかけ続けていたという関係性が、この人が語り出せた背景にあることも重要である。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢が忘却の促し、根拠のない保証、時期尚早な活動の提案で構成されている。感情を受け止めたうえで、生活を確かめるという実際的な対応を選ぶ。
5分で振り返る
①悲嘆と罪責感の中では睡眠と食事が保てなくなりやすい。②これらは重症度の具体的な指標にもなる。③忘れるよう促さない、根拠のない保証をしない。④行方不明は曖昧な喪失で悲嘆が長引く。⑤サバイバーズギルトは正常な反応と伝える。⑥不眠・摂食不能・希死念慮があれば専門的支援へつなぐ。
1分チェック
- 強い悲嘆を訴える被災者にまず確認することは何か。→ 睡眠と食事の状況。
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