次の文を読み、問いに答えよ。大型の台風が直撃するという予報を受けて、午前9時、病院では災害対策本部が立ち上がった。また、病院の所在する市から避難所への看護師派遣の要請を受け、対応することになった。
午後1 時、落雷によって病院の電源供給が一時停止したが、直後に自家発電に切 り替わり、医療機器は正常に作動している。ICU には患者4 名が入院し、全員が 輸液ポンプを使用している。A さん(65 歳、女性)は鎮静薬が投与され、人工呼吸 器が装着されている。B さん(78 歳、男性)は大声で家族を呼び続けている。その 他の患者は心配そうな表情でICU 内を見回している。 このときのICU 看護師の対応で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
落雷で電源が一時停止し自家発電に切り替わったICUで、看護師の対応を問う。意識が清明な患者に声かけを行うことである。
この問題で問われていること
設備が正常に復旧した状況で、次に必要になるものを判断できるか。
しくみから理解する
自家発電に切り替わり、医療機器は正常に作動している。つまり生命維持に関わる機器の問題は解消しており、身体的な危機は回避されている。この段階で残っているのは、患者の心理的な動揺である。ICUの患者は、身体の状態が不安定なうえ、非日常的な環境と拘束感の中にあり、停電という出来事は強い不安と混乱を引き起こす。事例でも、患者が大声で家族を呼び、他の患者が心配そうに見回している様子が描かれている。声をかけて状況を説明し、安全であることを伝えることは、不安を和らげ、せん妄の予防にもつながる。設備が確保された後は、人への対応が優先される。
選択肢ごとの確認
大声を出しているという理由で転棟させる判断はできない。ICUに入室しているのは集中治療が必要だからであり、転棟は病状に基づく判断である。また混乱している患者を環境の変わる場所へ移すことは、かえって不安と混乱を強める。
人工呼吸器は正常に作動している。正常に動いている機器を外して用手換気に切り替える理由がなく、回路の外れによる感染や換気量の不安定さを招く。用手換気に切り替えるのは、機器が停止した場合や作動不良が確認された場合である。
輸液ポンプも正常に作動している。自然滴下に切り替えると、流量が体位や刺入部の状態で変動し、正確な投与ができなくなる。ICUでは循環作動薬など厳密な流量管理を要する薬剤が使われることも多く、切り替えは危険である。
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混同しやすいポイント
『災害だから何か特別なことをする』という発想が誤肢を選ばせる。実際には、設備が確保されているなら通常の管理を続けることが最も安全である。変えるべきでないものを変えることが、新たなリスクを生む。設問文の『医療機器は正常に作動している』という一文が、誤肢3・4を否定する根拠になっている。
理解を深める
停電への備えとして、医療機関は非常用電源(自家発電)を確保し、重要な機器を非常電源のコンセント(色分けされている)に接続しておく。自家発電の起動までに数十秒を要する機種もあるため、人工呼吸器や輸液ポンプは内蔵バッテリーで橋渡しする。バッテリーの残量と作動確認は日常の点検項目になる。停電時には、まず機器の作動確認(人工呼吸器、モニター、輸液ポンプ、吸引器)、患者の状態確認、照明の確保(懐中電灯の配置)、そして患者と家族への説明を行う。用手換気用のバッグバルブマスクは、ベッドサイドに常備し、いつでも使えるようにしておく。停電が長引く場合は、酸素と吸引の供給、エレベーターの停止、通信手段の確保も課題になる。あわせて、ICUではせん妄の予防として、時計とカレンダー、日中の光、夜間の静穏、見当識への働きかけが日常的に重要である。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢が『正常なものを変える』方向で作られている。設問文に書かれた状況(機器は正常)を読めば、残る課題は人の不安だと分かる。
5分で振り返る
①機器が正常なら通常の管理を続ける、変えないことが安全。②残る課題は患者の不安と混乱。③声かけと説明はせん妄の予防にもなる。④用手換気への切り替えは機器停止時。⑤自然滴下への切り替えは流量が不正確になる。⑥重要機器は非常電源に接続、バッテリー残量を日常点検。
1分チェック
- 自家発電に切り替わり機器が正常なとき、次に何をするか。→ 患者への声かけ(不安への対応)。
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