次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(27歳、男性、会社員)は1人で暮らしている。最近、事務部門から営業部門に異動になった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、panicdisorderパニック症〈パニック障害〉と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と抗うつ薬が処方された。また、職場の協力を得て、苦手な仕事のサポートをしてもらうことになった。受診から2日、Aさんから「また発作が起きるのではないかと考えてしまい、家から出られません」とクリニックに電話があった。
A さんのパニック発作は消失し、不眠も改善したため、睡眠薬の服用は終了と なった。A さんは「もともと手足が冷えて寝つきが悪かったから、睡眠薬がなくな ることが心配です。自分で工夫できることはあるでしょうか」と看護師に尋ねた。 看護師が以前の睡眠状況を尋ねると、睡眠時間は23 時から6 時までの7 時間で あった。 A さんの睡眠へのセルフケアに対する看護師の指導で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
睡眠薬が終了となり、自分で工夫できることを尋ねた患者への指導を問う。眠くなってからベッドに横になるとよいと伝えることである。
この問題で問われていること
睡眠衛生の原則に基づいた具体的な助言ができるか。
しくみから理解する
眠れないまま長く床にいると、寝床が『眠れない場所』として条件づけられ、横になること自体が緊張を生むようになる。これを防ぐため、眠気を感じてから床に入る、眠れなければいったん寝床を離れる、という刺激制御法が用いられる。この患者はもともと寝つきが悪いと述べており、この方法が直接に役立つ。睡眠薬を終了した後のセルフケアとして、本人が自分で実行できる具体的な内容でもある。
選択肢ごとの確認
起床時刻がずれると体内時計が乱れ、日曜の夜に眠れなくなる。睡眠衛生では、就寝時刻より起床時刻を一定に保つことが重視される。休日の寝坊は平日との差を2時間以内にとどめるのが目安とされる。
夕方以降の仮眠は睡眠圧を下げ、夜間の入眠を妨げる。仮眠をとるなら午後3時までに短時間とする。
熱い湯は交感神経を刺激して覚醒を高める。入眠を助けるには、38〜40℃程度のぬるめの湯に就寝の1〜2時間前に入り、いったん上がった深部体温が下がる過程を利用する。この患者は手足の冷えを訴えており、就寝前の足浴や靴下といった末梢を温める工夫も有効だが、熱い風呂は逆効果である。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
『体を温めれば眠れる』という発想が誤肢3を選ばせる。実際には、深部体温が下がるときに眠気が訪れるため、入浴のタイミングと湯温が重要になる。就寝直前の熱い湯は覚醒を高める。末梢を温めて放熱を促すことは有効で、この違いを理解しておく。
理解を深める
睡眠衛生の主な項目は、①起床時刻を一定にする ②朝に光を浴びる ③日中に活動する ④仮眠は午後3時までに短く ⑤就寝前のカフェイン・アルコール・喫煙を避ける ⑥就寝1〜2時間前にぬるめの入浴 ⑦寝室を暗く静かに快適な温度に ⑧就寝前の強い光(スマートフォン等)を避ける ⑨眠くなってから床に入る ⑩眠れなければ床を離れる、である。アルコールは入眠を早めるが睡眠を浅くし中途覚醒を増やすため、寝酒は勧めない。睡眠薬を終了した後は、一時的に不眠が戻る(反跳性不眠)ことがあり、それが再開への不安につながる。あらかじめ説明し、数日で落ち着くことを伝えておくと、自己判断での再開や受診中断を防げる。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢が『長く寝る』『先に寝る』『温める』と、一見よさそうな助言で構成されている。機序(体内時計、睡眠圧、深部体温)から判断する。
5分で振り返る
①眠れないまま床にいると寝床が眠れない場所として条件づけられる。②眠くなってから床に入り、眠れなければいったん離れる。③起床時刻を一定にする(休日の差は2時間以内)。④仮眠は午後3時までに短く。⑤入浴はぬるめで就寝1〜2時間前。⑥末梢を温めて放熱を促すのは有効。⑦寝酒は睡眠を浅くする。
1分チェック
- 寝つきが悪い人への指導は何か。→ 眠くなってから床に入る(刺激制御)。
この問題に対応する教材の確認中です。