次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(27歳、男性、会社員)は1人で暮らしている。最近、事務部門から営業部門に異動になった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、panicdisorderパニック症〈パニック障害〉と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と抗うつ薬が処方された。また、職場の協力を得て、苦手な仕事のサポートをしてもらうことになった。受診から2日、Aさんから「また発作が起きるのではないかと考えてしまい、家から出られません」とクリニックに電話があった。
1 か月後、A さんは通勤途中の電車の中で再びパニック発作を起こし、受診し た。看護師が話を聞くと「そのときは、息が止まってしまうように感じました。ま た同じようになるかと思うと怖くて電車に乗れません。仕事にも支障が出ていま す。電車での通勤は続けたいです」と話した。 相談を受けた看護師のA さんへの対応で最も適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
電車内で発作を起こし、通勤は続けたいと話す患者への対応を問う。発作が起こりそうな場面を想定した対処法を看護師と一緒に練習することである。
この問題で問われていること
本人の希望を実現するために、どの介入が最も直接的かを判断できるか。
しくみから理解する
この患者は『電車での通勤は続けたい』と明確に述べている。回避を続ければ一時的に不安は下がるが、回避が広がり生活はさらに狭まる。必要なのは、電車という場面に戻れるようにすることであり、そのためには発作が起きそうなときにどうするかを、あらかじめ身につけておくことが有効になる。腹式呼吸、注意を外に向ける方法、『これは発作であり必ず治まる』と自分に言い聞かせる認知的な対処、必要なら途中下車するという計画などを、看護師と一緒に具体的に練習する。実際の場面で使える対処法を持つことが、予期不安を減らし、段階的に電車に乗れるようになる土台になる。
選択肢ごとの確認
回避を支援することになる。一時的には楽になるが、電車に乗れない状態が固定され、本人の『電車での通勤を続けたい』という希望にも反する。回避を減らす方向で支援する。
服薬の継続には必要な情報だが、いま困っているのは電車に乗れないことである。薬の知識だけでは場面での対処にならない。心理教育は並行して行うが、この場面の最優先ではない。
自助グループは孤立を和らげ、対処の工夫を学ぶ場として有用である。ただし本人が求めているのは具体的な場面への対処であり、より直接的な介入がある。
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混同しやすいポイント
回避を助けるか、回避を減らすか、という向きが判断の軸になる。誤肢1は回避の支援であり、最も避けたい方向である。誤肢2・3は有用だが間接的である。設問が『最も適切な』と限定している点を読み、本人の希望に最も直接届くものを選ぶ。
理解を深める
パニック症の認知行動療法では、心理教育(発作の正体を知る)、身体感覚への曝露(意図的に動悸や息苦しさに似た感覚を作り、それが危険でないと体験する)、状況への曝露(避けている場面に段階的に戻る)、認知の修正(破局的な解釈を検討する)を組み合わせる。曝露は、不安の階層表を作り、低いものから順に進める。この患者であれば、駅まで行く、一駅だけ乗る、空いている時間に乗る、といった段階が考えられる。看護師が行うのは、専門的な曝露療法そのものではなく、対処法の練習と、段階的な挑戦への同行と励ましである。過呼吸を伴う場合、かつて行われた紙袋による再呼吸法は低酸素の危険があり現在は推奨されず、ゆっくりした腹式呼吸を用いる。
間違えやすい考え方
『最も適切なのはどれか』型で、誤肢が回避の支援と、間接的な支援で構成されている。本人の希望と、回避を減らすという治療の方向で選ぶ。
5分で振り返る
①回避を続けると生活が狭まる、回避を減らす方向で支援する。②対処法=腹式呼吸、注意の切り替え、必ず治まるという認知、途中下車の計画。③不安の階層表を作り段階的に挑戦する。④心理教育と薬の説明は並行して行う。⑤紙袋による再呼吸法は推奨されない。
1分チェック
- 電車に乗れなくなった患者に何をするか。→ 発作が起きそうな場面への対処法を一緒に練習する。
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