次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(27歳、男性、会社員)は1人で暮らしている。最近、事務部門から営業部門に異動になった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、panicdisorderパニック症〈パニック障害〉と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と抗うつ薬が処方された。また、職場の協力を得て、苦手な仕事のサポートをしてもらうことになった。受診から2日、Aさんから「また発作が起きるのではないかと考えてしまい、家から出られません」とクリニックに電話があった。
A さんの状況に対するクリニックの看護師のアセスメントで適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
パニック症と診断された患者が「また発作が起きるのではないかと考えてしまい、家から出られない」と電話してきた場面のアセスメントを問う。予期不安である。
この問題で問われていること
パニック症の3つの要素を区別できるか。
しくみから理解する
パニック症は、①予期しないパニック発作、②発作がまた起こるのではないかという持続的な心配(予期不安)、③発作を避けるための行動の変化(回避)という要素で構成される。この患者は『また発作が起きるのではないかと考えてしまう』と述べており、これがまさに予期不安である。そしてその結果として『家から出られない』という回避が生じている。発作そのものは数分から数十分で治まるが、予期不安と回避は持続し、生活を大きく制限する。この構造を理解することが、治療の方向を決める。
選択肢ごとの確認
抑うつ気分、興味の喪失、意欲低下といったうつ症状を示す記述はない。パニック症にうつが併存することは多いが、この時点の訴えは発作への恐れであり、うつの評価には別の情報が要る。
持ち越し効果は、翌朝以降に眠気、ふらつき、集中力低下が残る現象で、長時間作用型で問題になる。処方されているのは短時間型であり、また訴えの内容も眠気ではなく不安である。
職場の協力を得て苦手な仕事のサポートを受けることになっており、むしろ環境は調整されている。また訴えは仕事の負担ではなく発作への恐れである。
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混同しやすいポイント
パニック発作そのものと、予期不安と、回避(広場恐怖)を区別する。発作=突然の強い恐怖と身体症状のエピソード、予期不安=また起こることへの持続的な心配、回避=発作が起きたら逃げられない場所を避けること。この事例では、発作の後に予期不安が生じ、それが回避(外出できない)につながる流れが示されている。
理解を深める
パニック発作の症状は、動悸、発汗、震え、息苦しさ、窒息感、胸痛、悪心、めまい、非現実感、コントロールを失う恐怖、死の恐怖などで、10分以内にピークに達し、多くは20〜30分で治まる。身体疾患(不整脈、甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫)との鑑別が必要になる。治療は、薬物療法(SSRIが第一選択、急性期にはベンゾジアゼピン系を併用することがある)と認知行動療法(心理教育、呼吸法、認知の修正、曝露)の組合せが有効である。看護では、発作は命に関わるものではないこと、必ず治まることを伝えること(心理教育)が、予期不安を和らげる出発点になる。SSRIは効果が出るまで2〜4週間かかり、初期に消化器症状や不安の一時的な増強が出ることも、あらかじめ説明しておく。
間違えやすい考え方
アセスメントを問う型で、誤肢がいずれもこの患者に起こりうる状態である。訴えの内容そのものが答えを示している点を読む。
5分で振り返る
①パニック症=発作+予期不安+回避。②発作は10分以内にピーク、20〜30分で治まる。③予期不安と回避が生活を制限する。④身体疾患(不整脈・甲状腺機能亢進症・低血糖)との鑑別が必要。⑤治療はSSRIと認知行動療法。⑥発作は命に関わらず必ず治まると伝える心理教育が出発点。
1分チェック
- 「また発作が起きるのでは」と考えて外出できないのは何か。→ 予期不安(とそれによる回避)。
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