「65歳の男性。左片麻痺と意識障害を生じた。頭部CT検査にて右被殻出血と診断され、保存的治療を受けた。リハビリテーションの評価において視覚の見落としが著明であった。」本患者の高次脳機能障害はどれか。
正答:2
正答:2
右の脳が傷んだあと、左側にあるものを見落とす。これは目が見えないのではなく、そちらへ注意が向かなくなった状態。正答は2。
視覚の見落としを、目の障害ではなく注意の障害として捉えられるか。
右の大脳半球は、左右どちらの空間にも注意を配れる。左の半球は主に右の空間だけを受け持つ。そのため右半球が傷むと、左半球だけでは左の空間を補いきれず、左側にあるものに気づけなくなる。これが半側空間無視で、視野そのものは保たれているのに、そちらへ注意が向かないために見落としが起こる。食事で左半分を残す、左側の人に話しかけられても気づかない、絵を描くと左半分が抜けるといった形で現れる。半側空間無視は注意の働きの障害に分類されるので、選択肢の中では注意障害が当てはまる。誤肢は別の系統の障害である。
見落としと聞くと視野の欠けを思い浮かべるが、半側空間無視では視野は保たれている。本人に「左を見て」と促せば見えるのに、放っておくと気づかない。ここが視野欠損との違いで、リハビリテーションの手立ても変わる。右半球の損傷で左側に起こるという左右の関係も、必ず対で覚える。
半側空間無視は右半球の損傷で起こることが圧倒的に多く、逆は少ない。左半球は言葉を受け持つので、左半球が傷めば失語が前面に出る。日常では、左側の壁や人にぶつかる、車椅子のブレーキを左だけかけ忘れる、食器の左半分に手をつけないといった形で現れ、転倒や事故につながる。評価には線分二等分試験や線分抹消試験が使われる。
高次脳機能障害の名前を4つ並べ、症状の記述から選ばせる。解法は、(1) 症状がどの働きの障害かを言い換える、(2) 各選択肢の障害が何をできなくするかを思い出す、(3) 言い換えと一致するものを選ぶ。
右の被殻が傷んだあとの視覚の見落としは、左側へ注意が向かなくなった半側空間無視で、注意の働きの障害にあたる。失行は動作の段取り、記憶障害は覚えること、遂行機能障害は計画の実行と、それぞれ別の系統。