次の文で示す症例で、鍼灸治療の効果を評価するのに最も適切なのはどれか。「65歳の女性。1年前から生活に充実感がなく、気持ちが沈む。倦怠感、食欲不振を伴う。幻覚や記憶障害はない。」
正答:4
正答:4
1年前から充実感がなく気分が沈み、倦怠感と食欲不振を伴う。幻覚も記憶障害もないのでうつ状態。うつの重症度を測るのはハミルトン評価尺度。正答は4。
症状から評価すべき領域(認知・移動能力・日常生活動作・気分)を決め、その領域に対応する評価尺度を選べるか。
評価尺度は測る領域が決まっている。認知機能を30点満点で測るのが改訂長谷川式簡易知能評価スケールで、年齢、日時と場所の見当識、3語の記銘と想起、計算、数字の逆唱、5つの物品の記銘、野菜の名前の列挙という9つの質問からなる。移動能力をみるのがタイムドアップアンドゴーテストで、椅子から立ち上がって一定距離を歩き、戻って着座するまでの時間を計る。バーセル・インデックスは食事・移乗・整容・排泄などの日常生活動作の自立度を点数化するもの。ハミルトン評価尺度はうつ症状の重症度を測る。本例は気分の落ち込みが1年続き、倦怠感と食欲不振を伴い、幻覚も記憶障害もない。気分の障害が中心なので、治療効果を追うにはハミルトン評価尺度が適する。
高齢者の症例というだけで長谷川式を選びやすいが、「幻覚や記憶障害はない」という一文が認知症を明確に否定している。設問が否定形で書いた所見は、選択肢を消すために置かれていることが多い。倦怠感と食欲不振はうつでも身体疾患でも出るので、決め手は気分の落ち込みが1年続いている点。
高齢者で鑑別が要るのは、うつ状態と認知症の初期。うつでは本人が物忘れを強く訴え、検査に非協力的で「わからない」と答えやすく、経過は比較的急。認知症では本人の自覚が乏しく、取り繕いがみられ、経過は緩徐。仮性認知症と呼ばれるうつによる認知機能の見かけ上の低下は、うつが改善すれば戻る。評価尺度は目的別に、認知機能=改訂長谷川式・MMSE、日常生活動作=バーセル・インデックス・FIM、移動能力=TUG・片脚立位、抑うつ=ハミルトン評価尺度・GDS。
高齢者の症例に、年齢から連想しやすい尺度を混ぜる。否定形の所見(幻覚や記憶障害はない)が消去の鍵。解法は、(1) 主要な症状がどの領域かを決める、(2) 各尺度が測る領域を出す、(3) 否定された領域の尺度を落とす。
評価尺度は測る領域で選ぶ。1年続く気分の落ち込みに倦怠感と食欲不振を伴い、幻覚も記憶障害もないのでうつ状態。うつの重症度を測るのはハミルトン評価尺度。改訂長谷川式は認知機能、タイムドアップアンドゴーテストは移動能力、バーセル・インデックスが測るのは日常生活動作の自立度で、いずれも本例の中心症状を捉えない。