次の文で示す病証に対する治療方針として最も適切なのはどれか。「43歳の女性。主訴は膝の痛み。1週間雨天が続き、症状が増悪している。昨日てんぷらを食べてから軟便である。舌は膩苔、脈は滑を認める。」
正答:4
正答:4
雨天が続いて悪化し、油ものを食べて軟便になり、舌は膩苔、脈は滑。すべて湿と痰の所見なので、痰湿を除く。正答は4。
増悪因子・食事・舌苔・脈という4つの手がかりを、すべて同じ病邪へ集約できるか。
湿邪には粘滞性と重濁性があり、湿気の多い環境で症状が重くなる。1週間の雨天で膝の痛みが悪化しているのはこの性質を示す。てんぷらのような脂っこいものは脾の運化に負担をかけ内湿を生むので、翌日の軟便も湿を裏づける。膩苔は舌の表面に細かい苔がねっとり張りついて取れにくいもので、湿の証や痰飲、陽虚のときに現れる。滑脈は行き来がなめらかで、皿の上を玉が転がるように触れ、痰飲や食滞のときに出る。増悪因子・食事・舌苔・脈の4つがすべて湿と痰を指しているので、治療方針は痰湿を除くこと。
膝の痛みという主訴から、変形性膝関節症を想定して「気血を補う」(滋養不足)へ流れやすい。舌苔と脈が実の所見なので虚証の治法は当たらない。膩苔と滑脈は湿・痰のセットで覚えると迷わない。
舌苔の読み方:薄白=正常または表証、白膩=寒湿・痰湿、黄膩=湿熱、黄燥=実熱で津液が損なわれた状態、少苔・無苔=陰虚。脈の読み方:滑=痰飲・食滞・実熱、濡=湿・虚、弦=肝胆・痛み、緊=寒・痛み、細=血虚・陰虚、数=熱、遅=寒。膝痛の弁証では、着痺(湿)なら重だるく雨天で悪化、痛痺(寒)なら冷えて固定性、気血両虚なら鈍く長引き押すと楽になる。
主訴の部位(膝)から病態を想像させ、舌脈を読ませない。解法は、(1) 増悪因子を読む、(2) 食事・便通の記述を読む、(3) 舌苔と脈で虚実と病邪を確認、(4) 4つが同じ方向を指すかを見る。
雨天が続いて膝の痛みが悪化し、油ものを食べて軟便になり、舌は膩苔、脈は滑。増悪因子・食事・舌苔・脈のすべてが湿と痰を指すので、方針は痰湿を除くこと。逆気を降ろすのは上逆の所見があるとき、血をめぐらせるのは瘀血、気血を補うのは虚証への治法で、いずれも本例の実の所見と合わない。