次の文で示す経脈病証で障害されている経脈の同名経を施術する場合、最も適切な治療穴はどれか。「72歳の男性。3日前から急に腰が痛くなり、身体を反らすことができなくなった。陰囊の脹痛、胸満、遺尿もみられる。」
正答:4
正答:4
腰痛で身体を反らせない・陰嚢の脹痛・胸満・遺尿は足の厥陰肝経の病証。厥陰の同名経は手の厥陰心包経で、選択肢では間使がそれ。正答は4。
経脈病証から経を決め、さらに「同名経」という関係(手足で同じ陰陽・同じ名前をもつ経)に置き換えて、その経の穴を選べるか。2段階の変換。
『霊枢』経脈篇の足の厥陰肝経の病証には、腰痛で俯仰できない、男子は疝気で陰嚢が腫れる、胸満、嘔逆、飧泄、遺尿、閉癃が挙がる。本例の腰痛で反らせない・陰嚢の脹痛・胸満・遺尿はこれに一対一で対応するので、障害されているのは足の厥陰肝経。同名経とは、手と足で同じ名前をもつ経のことで、太陰なら肺経と脾経、少陰なら心経と腎経、厥陰なら心包経と肝経、陽明なら大腸経と胃経、太陽なら小腸経と膀胱経、少陽なら三焦経と胆経。したがって足の厥陰肝経の同名経は手の厥陰心包経。選択肢のうち心包経に属するのは間使で、前腕前面の長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋の上方3寸にある。霊道は心経、陽谷は小腸経、支溝は三焦経。
同名経と表裏経を取り違えやすい。表裏経は陰経と陽経の組(肝と胆、心包と三焦)で、同名経は手と足で同じ名前をもつ組(肝と心包、胆と三焦)。設問が「同名経」と書いていれば、陰陽は変えずに手足を移す。厥陰=心包と肝という対応を即答できるかが分かれ目。
同名経の6組:太陰=手の太陰肺経と足の太陰脾経、少陰=手の少陰心経と足の少陰腎経、厥陰=手の厥陰心包経と足の厥陰肝経、陽明=手の陽明大腸経と足の陽明胃経、太陽=手の太陽小腸経と足の太陽膀胱経、少陽=手の少陽三焦経と足の少陽胆経。同名経は同じ気の性質を分け持つとされ、一方の病に他方の穴を用いる同名経取穴が行われる。肝経の病証の詳細は『霊枢』経脈篇にあり、腰痛不可以俯仰、丈夫㿉疝・婦人少腹腫、甚則嗌乾・面塵脱色、胸満・嘔逆・飧泄・狐疝・遺尿・閉癃。
経脈病証で経を決めさせたあと、表裏経ではなく同名経へ移させる。誤肢は他の同名経の組から取る。解法は、(1) 病証→経、(2) その経の陰陽と名前(厥陰)を出す、(3) 手足を入れ替えた経を出す、(4) その経に属する穴を選ぶ。
腰痛で身体を反らせない・陰嚢の脹痛・胸満・遺尿は足の厥陰肝経の経脈病証。同名経は手足で同じ名前をもつ経なので、厥陰の相手は手の厥陰心包経。選択肢のうち心包経の穴は間使。霊道は心経(少陰)、陽谷は小腸経(太陽)、支溝は三焦経(少陽)で、いずれも別の同名経の組。表裏経と取り違えないこと。