次の文で示す病証で最も適切なのはどれか。「58歳の女性。昨夜から陰部掻痒感を自覚。最近イライラすることが多く、飲酒量が増えた。舌辺に黄厚膩苔、脈は左関上の浮数滑を認める。」
正答:3
正答:3
陰部の掻痒感、イライラ、飲酒の増加。舌辺の黄厚膩苔と左関上の浮数滑は肝胆の湿熱。肝経は陰器をめぐるので肝経湿熱。正答は3。
症状の出た部位を経脈の流注へ、舌の部位配当と六部定位脈診の部位を臓腑へ、それぞれ翻訳して重ねられるか。
足の厥陰肝経は下肢内側を上って陰器をめぐり少腹に至るので、陰部の症状は肝経を疑う手がかりになる。イライラは肝の疏泄失調。飲酒の増加は湿熱を生む代表的な原因。舌診では舌辺(舌の縁)が肝胆に配当されるので、ここに黄厚膩苔があれば肝胆の湿熱を示す。黄は熱、厚膩は湿。六部定位脈診では左手の関上が肝胆にあたり、ここが浮数滑であることも肝胆に熱と湿があることを裏づける。部位・情志・飲酒・舌・脈の5つがすべて肝経の湿熱を指す。胃陰虚なら口渇・空腹感はあるが食べられない・舌紅少苔、胃熱なら多食・口臭・歯肉の腫れ、肝陽上亢ならめまい・頭痛・のぼせ・耳鳴で、いずれも陰部の掻痒と湿の所見を説明しない。
舌の部位配当と六部定位脈診の配当を両方使う設問。舌尖=心、舌辺=肝胆、舌中=脾胃、舌根=腎。脈は左の寸=心、関=肝胆、尺=腎、右の寸=肺、関=脾胃、尺=腎(命門)。どちらか一方でも肝胆と読めれば絞れる。苔の色(黄=熱)と厚さ・膩(湿)を分けて読む。
肝経湿熱(肝胆湿熱)の症状:脇肋部の脹痛、口が苦い、食欲不振、悪心、黄疸、陰部の掻痒や湿疹、帯下が黄色く臭う、陰嚢の湿疹、尿が濃い、舌紅・苔黄膩、脈弦数または滑数。飲酒や脂っこいものの過食が誘因。治法は清利肝胆湿熱で、行間・太衝・陰陵泉・三陰交・蠡溝などが用いられる。蠡溝は肝経の絡穴で、陰部の症状に用いられることが多い。
胃の証を2つ置き、臓を取り違えさせる。解法は、(1) 症状の部位を経脈の流注へ翻訳、(2) 舌の部位配当で臓を確認、(3) 脈診の部位でもう一度確認、(4) 苔の色と厚さで熱と湿を分ける。
陰部の掻痒感は肝経が陰器をめぐることから肝経を、イライラは肝の疏泄失調を示す。飲酒の増加は湿熱を生む。舌辺は肝胆の配当で、そこに黄厚膩苔があるので熱と湿の両方。六部定位脈診の左関上も肝胆で、浮数滑がこれを裏づける。よって肝経湿熱。胃陰虚・胃熱は臓が違い、肝陽上亢は湿の所見を伴わない。